ソウル繁華街で起きた雑踏事故(写真:AP/アフロ))

10月29日午後10時頃、韓国・ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で発生した群衆雪崩事故により、日本人2人を含む154人の死亡がこれまでに確認された。群衆雪崩とは、人が密集した場所で1人が倒れることで、周りが雪崩を打つように転倒してしまう事態。国内では2001年7月兵庫県明石市の歩道橋で花火見物客11人が死亡した事故が有名だが、海外を含めると、こうした群衆事故は頻繁に発生している。

【Wikipediaでは国内外の群衆事故が数多く報告されている】

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%A4%E9%9B%86%E4%BA%8B%E6%95%85

https://en.wikipedia.org/wiki/Crowd_collapses_and_crushes

今月10月1日、インドネシアのサッカースタジアムで暴動により130人以上の犠牲者を出した事故も原因は群衆雪崩とされている。昨年2021年には、米国テキサス州で、音楽フェスティバルでステージに押し掛けた観客10人が死亡する事故が起きた。大規模なものでは、2015年にサウジアラビアのメッカで、ハッジに訪れていた多数の巡礼者が将棋倒しとなり2181人以上が圧死する惨事も起きている。

こうした大規模なイベントだけではなく、国内で特に群衆事故の発生が懸念されているのが、首都直下地震などの災害時である。

第32回明石市民夏まつりにおける花火大会事故調査報告書(明石市民夏まつり事故調査委員会:平成14年1月)によれば、群衆事故は「将棋倒し」と「群衆なだれ」に区別される。「将棋倒し」では倒れる方向は一方向で、後ろから前に倒れる場合が多く、5 人/㎡程度の比較的低い密度のときでも起こりうるのに対し、「群衆なだれ」は 10 人/㎡以上の高密度でないと発生しないし、倒れる方向も一方向ではなく いくつかの方向があり、弱いところに向かって周囲から倒れ込むこともある。災害時には、どちらも起きやすい状況ということが、まず注意すべき点だ。

首都直下地震では800万人の帰宅困難者が予想されている

東日本大震災では、国の推計によると帰宅困難者は首都圏の1都4県で515万人、東京都内だけでも352万人にのぼった。今後30年間に70%の確率で発生されるとされている首都直下地震では、首都圏全体で約800万人もの帰宅困難者の発生が予想されている。

今年5月に東京都が10年ぶりに作成・公表した新たな首都直下地震の被害想定では、身近で起き得るシナリオとして、▼帰宅困難者が一時滞在施設等に多数殺到し周辺が混乱する可能性や、▼オフィスビル等で夏季の発災などで空調停止した場合に滞在が困難となりさらに多くの従業員や施設利用者等が路上に溢れ出す可能性、▼運行を再開した区間では、駅やその周辺に多くの人々が殺到する可能性--などが例示された。こうした事態を防ぐために、企業としてはどう対応すべきか。