あなたの職場は大規模災害を乗り超えられますか?
第1回:教育の観点で分析する災害対策の課題
藤田 幸憲
1985年生まれ、広島県出身。北海道大学大学院卒業後、2011年NTTファシリティーズ入社、建築積算業務や営業を経験。18年NTTラーニングシステムズに出向し、22年NTT Human EXに出向。NTTグループ各社の災害対応の人材育成や民間企業への災害対応コンサルティングに携わる。25年独立しYTCラボを起業。一級建築士。
2025/08/22
人中心の企業防災-原点としての「教育」
藤田 幸憲
1985年生まれ、広島県出身。北海道大学大学院卒業後、2011年NTTファシリティーズ入社、建築積算業務や営業を経験。18年NTTラーニングシステムズに出向し、22年NTT Human EXに出向。NTTグループ各社の災害対応の人材育成や民間企業への災害対応コンサルティングに携わる。25年独立しYTCラボを起業。一級建築士。
私は前職(NTTファシリティーズ、NTTラーニングシステムズ、NTTHumanEX)で「建築×災害対応×人材育成」という、ちょっと変わったキャリアを歩み、教育の観点からNTTグループを含む100社以上の災害対応力向上に取り組んできました。これまで培った知見を新たなかたちで社会展開したいという想いで2025年春に前職を退職し、起業して現在に至ります。
本コラムでは複数回に分けて、教育の観点から現在の企業の災害対策の課題を分析、解決に向けたヒントと成功事例をご紹介します。
このコラムを読んでいただいているみなさんへ質問です。
今、首都直下地震や南海トラフ地震が発生したとします。「うちの職場はこの災害をなんとか乗り越えられそうだ」という自信はあるでしょうか?
「やるべき対策はやっているはずだけど、自信はない…」という方が多いのではないでしょうか? まずは、みなさんの職場で現在取り組んでいる災害対策を思い浮かべてみてください。
次に、なぜ自信がないのか、理由を考えてみてください。
自信がない理由の中に「人」にまつわる要因が多く含まれてないでしょうか?
ここからは分析する対象を「人」から「教育」へ範囲を広げ、教育上の課題整理とその解決という流れで話を進めます。
災害対策に必要な物品やシステム、サービス導入前に、自社の課題を検証したことはあるでしょうか?
私の元には下記のような問い合わせがよく寄せられます。
初回の打ち合わせで、いきなり提案を始めることはありません。よいサービスであっても、解決すべき真の課題に対する打ち手でなければ、効果が小さいからです。
まずは日ごろの取り組みをヒアリングして、お問い合わせをいただいたきっかけや、やりたいことを深掘りしていきます。課題の洗い出しと解決すべき課題を特定した上で、課題解決の提案を行っています。一連の取り組みの結果として、当初のご希望とは異なる施策を提供する場合もあります。
新しい施策を検討する際は、簡易的でもよいので、自社の課題検証から始めると、より効果的な解決策が見つかりやすくなります。ぜひ本コラムを参考に実践してみてください。
「教育」に関するよくある課題をまとめました。みなさんの職場にも当てはまるものがないか、振り返りながら読んでみてください。
みなさんの職場では、災害対応に関する訓練や演習、周知などの教育について、どのような取り組みをされていますか?
災害対応力向上には「仕組み」「もの」「教育」の3つのバランスが大事ですが、教育は後回しになる傾向にあります。
●災害対応力向上の3要素
「仕組み」の構築や「もの」の準備は統計データにおいても、お客様との会話を通した肌感覚においても、年々充実してきていると感じます。一方で、構築した仕組みを検証する演習や導入したシステムや物を使いこなすための訓練はできていないという声を多く聞きます。
これらの教育はなぜ後回しになるのでしょうか?
前例踏襲型の防災訓練や、物の調達、簡易マニュアル策定は、防災担当者単独でも対応できます。一方で、本格的な演習や、議論を通してまとめる本格的なBCP策定には、本業が忙しい経営層や現場責任者クラスを巻き込む必要があります。
「災害対策は総務でやってよ」という風潮がある中で、時間を確保して、多くの部署を巻き込む、この高いハードルを乗り越えられないことが原因の一つだと感じています。
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