2022年5月の労働安全衛生規則などの一部改正を受け、化学物質管理体系の見直しや、実施体制の強化、情報伝達の強化などが事業者に義務付けられる。今回の改正は、化学物質による労働災害を防止することを目的としており、新たは化学物質規制項目は、2023年4月と2024年4月に分けて施行される。

厚生労働省によると、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く)の原因となった化学物質の多くは、化学物質関係の特別規則の規制の対象外となっている。今回の改正は、これら規制の対象外であった有害な化学物質を主な対象として、国によるばく露の上限となる基準の策定、危険性・有害性情報の伝達の整備拡充等を前提として、事業者が、リスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を適切に実施する制度を導入するものだ。

改正点は、大きく①「化学物質管理体制」②「実施体制」③「情報伝達」に分けられる。

 

① 化学物質管理体制

化学物質管理体制では、ばく露濃度の低減措置や、皮膚や目に障害を与える化学物質を扱う際の保護具使用、衛生委員会での付議事項の追加などが、事業者に義務づけられる。ばく露濃度の低減措置は、労働者がリスクアセスメント対象物に暴露される程度を、「代替物の使用」「発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体回帰装置の設置と稼働」「 作業方法の改善」「有効な呼吸用防護具の使用」などの方法で最小限にとどめられるようにしなくてはならない。

リスクアセスメント対象物とは、労働安全衛生法57条の3でリスクアセスメントの実施が義務づけられている危険・有害物質を指す。また来年2024年4月以降は、「濃度基準値設定物質」に定められた一部物質のばく露程度を、基準値以下とすることも義務づけられる。

保護具の使用は、皮膚や目に障害を与えることが明らかな化学物質を製造、または取扱う従業員に対して、「保護メガネ」「不浸透性の保護衣」「保護手袋」「 履物」 などの障害等保護具を使用させなければいけない(努力義務)。このほか、健康障害を起こす可能性が否定できない化学物質を製造、取扱う従業員に対しても上記の保護具を使用させることが努力義務とされる。

衛生委員会での付議事項については、以下4点が追加された。
・労働者が化学物質にばく露される程度を最小限度にするために講ずる措置に関すること
・濃度基準値の設定物質について、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とするために講ずる措置に関すること
・リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露低減措置等の一環として実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること
・濃度基準値設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること