2023/02/20
オピニオン

2022年5月の労働安全衛生規則などの一部改正を受け、化学物質管理体系の見直しや、実施体制の強化、情報伝達の強化などが事業者に義務付けられる。今回の改正は、化学物質による労働災害を防止することを目的としており、新たは化学物質規制項目は、2023年4月と2024年4月に分けて施行される。
厚生労働省によると、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く)の原因となった化学物質の多くは、化学物質関係の特別規則の規制の対象外となっている。今回の改正は、これら規制の対象外であった有害な化学物質を主な対象として、国によるばく露の上限となる基準の策定、危険性・有害性情報の伝達の整備拡充等を前提として、事業者が、リスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を適切に実施する制度を導入するものだ。
改正点は、大きく①「化学物質管理体制」②「実施体制」③「情報伝達」に分けられる。

① 化学物質管理体制
化学物質管理体制では、ばく露濃度の低減措置や、皮膚や目に障害を与える化学物質を扱う際の保護具使用、衛生委員会での付議事項の追加などが、事業者に義務づけられる。ばく露濃度の低減措置は、労働者がリスクアセスメント対象物に暴露される程度を、「代替物の使用」「発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体回帰装置の設置と稼働」「 作業方法の改善」「有効な呼吸用防護具の使用」などの方法で最小限にとどめられるようにしなくてはならない。
リスクアセスメント対象物とは、労働安全衛生法57条の3でリスクアセスメントの実施が義務づけられている危険・有害物質を指す。また来年2024年4月以降は、「濃度基準値設定物質」に定められた一部物質のばく露程度を、基準値以下とすることも義務づけられる。
保護具の使用は、皮膚や目に障害を与えることが明らかな化学物質を製造、または取扱う従業員に対して、「保護メガネ」「不浸透性の保護衣」「保護手袋」「 履物」 などの障害等保護具を使用させなければいけない(努力義務)。このほか、健康障害を起こす可能性が否定できない化学物質を製造、取扱う従業員に対しても上記の保護具を使用させることが努力義務とされる。
衛生委員会での付議事項については、以下4点が追加された。
・労働者が化学物質にばく露される程度を最小限度にするために講ずる措置に関すること
・濃度基準値の設定物質について、労働者がばく露される程度を濃度基準値以下とするために講ずる措置に関すること
・リスクアセスメントの結果に基づき事業者が自ら選択して講ずるばく露低減措置等の一環として実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること
・濃度基準値設定物質について、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに実施した健康診断の結果とその結果に基づき講ずる措置に関すること
オピニオンの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方