危機管理とBCPの専門メディアであるリスク対策.com は、企業をはじめとする組織が、2023 年2 月現在、新型コロナウイルス感染症に対して、どのような対策を行っているのか、今後どのように対応する方針なのかを明らかにすることを目的に 2 月13 日から 22 日まで、インターネットによるアンケート調査を実施しました。政府は、マスクの着用について 3 月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねることを決め、さらに 5 月 8 日からは新型コロナウイルスの感染法上の分類を季節性インフルエンザと同じ「5 類」に引き下げることを決定しました。そのため、企業は、マスクの着用や、感染時の出勤停止期間などのルールを独自に決める必要があります。

本調査の結果、今後の施設内におけるマスクの着用方針については「未定」との回答が最も多く、感染対策の緩和には慎重な姿勢が浮かび上がりました。5 類移行後の感染時の出勤停止期間についても「未定」が最も多くなりました。一方、「未定」を除くと、「5 日以上 7 日未満」との回答が最も多く、現状の政府の基本的対処方針に基づく自宅療養期間を踏襲したいと考えている企業も多いことが分かりました。

アンケートの対象はリスク対策.com のメールマガジン購読者(約2 万5000 人)で、計306 の回答があり、そのうち、同一企業からの重複回答などを除いた294 件を有効回答として分析しました。回答企業の属性は、東京都に本社を持つ企業が56.1%で過半数を占め、次いで大阪府が 10.2%でした。業種は製造業が39.1%で最も多く、情報通信・IT 関連(9.9%)、専門サービス業(8.5%)の順となりました。企業規模は、101人~ 500人(23.5%)が最も多く、1001人~ 5000人(23.1%)がほぼ同率でした。回答企業の8割以上がBCPを策定しており、感染症を想定したBCPを策定している企業も64%ありました。回答者の7割が総務・リスクマネジメント部門でした。

画像を拡大 災害を想定したBCPの運用状況
画像を拡大 感染症を想定したBCPの運用状況

なお、結果の分析に際しては、① 100人以下の企業群、② 101人~ 1000人の企業群、③ 1001人以上の企業群の3 グループ間で比較を行いました(一元配置分散分析)。また BCP の取り組み状況として、①感染症を想定した BCP を未策定、あるいは策定したものの、その後見直していない企業群(感染症BCP見直し無)と、②策定して見直しを行っている企業群(感染症 BCP見直し有)の2 グループ間で比較を行いました(t検定による比較)。本記事では有意水準5%未満の場合を「有意差あり」と表現しています。

 

■サマリー

【1】職場でのマスクの着用については「未定」が最多

政府は3 月 13 日から屋内・屋外を問わずマスクの着用を個人の判断に委ねる方針を決定しましたが、今後の施設内におけるマスクの着用方針については、「未定」との回答が 35.4 %と最も多く、いまだ企業としての方針が決めきれないでいる状況が浮き彫りになりました。次に多かったのが「政府の方針に従う(個人の判断に委ねる)」( 27.8 %)でした。企業規模で有意な差は見られませんでした。マスク着用に関する自由回答では、「社員間でも意見が分かれ、会社として強制できない」「工場とオフィスではリスクが異なる」などの課題が多く出されました 。

画像を拡大 【3月13日以降の 】 「施設内における」マスクの着用方針(企業規模別)

【2】パーテーションは継続して使用

感染防止のためのアクリル板パーテーションの今後の設置方針についても、「未定」(31.3 %)との回答が多かったものの、「現状のまま継続して使う」が 36.8 %で最多となりました。「現状のまま継続して使う」との回答は、企業規模が小さなグループほどその割合が多く、 100 人以下の企業グループでは 43.9 %となりました。ただし、企業規模での有意な差は確認されませんでした。

画像を拡大 【 今後の 】 アクリル板パーテーションの今後の設置方針(企業規模別)

【3】ジェットタオルはすでに稼働が最多

トイレなどに設置しているジェットタオルの今後の稼働予定については、「当初停止していたが、すでに稼働させている」との回答が35.3%で最も多くなりました。「今後も当面稼働させる予定がない」との回答も2 割弱ありました。なお、企業規模による有意な差は確認されませんでした。

画像を拡大 【 今後の 】 トイレなどのジェットタオルの今後の稼働予定(企業規模別)

【4】在宅勤務は「現状レベル」を継続

今後の在宅勤務の方針については、大半の企業が「現状のレベルを維持」と回答。「在宅勤務者を減らして出社を増やす」との回答は全体で23%ありましたが、逆にテレワークをさらに推進は1.6%にとどまりました。別の質問で、現時点におけるテレワークの実施状況について聞いたところ、指導していないが21.4%、指導しているが21.1%、推奨しているが38.2%と回答が分かれ、テレワークの推進については、企業によって大きく異なっていることが推測されます。

画像を拡大 【 今後の 】 在宅勤務の方針(企業規模別)

 

目次

1. 【 現時点における 】 感染疑い時における従業員に対する指導

2. 【 現時点における 】 濃厚接触者となった場合などの指導

3. 【 現時点における 】 職場での対策状況

4. 【 現時点における 】 従業員個人のワクチン接種状況の管理

5. 【 現時点における 】 従業員感染時における接触者への連絡

6.【 現時点における 】 マスク・消毒液の備蓄状況

7. 【 これまでの 】 新型コロナウイルス対応への検証

8. 【 3月13日以降の 】 「施設内における」マスクの着用方針

9. 【 今後の 】 アクリル板パーテーションの今後の設置方針

10. 【 今後の 】 トイレなどのジェットタオルの今後の稼働予定

11. 【 今後の 】 「社外における」社員同士の会食

12. 【 今後の 】 在宅勤務の方針

13. 【 5 類移行後の 】 感染者や濃厚接触者の出勤停止期間

14.  自由回答-現在の課題