先月、Wechatに中国人の友人から1本のショート動画が届いた。その動画は、中国人のインフルエンサーが「BMWアイス事件」についてその経緯と、企業文化の重要性について話している、という内容だった。

これは大事になりそうな事案だと思っていたところ、外出先でたまたま手に取った読売新聞の国際面に「BMW批判 中国やまず」の見出しで、大きなスペースで取り上げられているのを目にした。なんでも騒動後にBMWの株価が3%超下落したとのことで、これは時価総額で21億ユーロ(約3100億円)相当になるらしい。

この動画を見たことがない方のために簡単に経緯を説明すると、2023年4月に上海で行われたモーターショーでBMWのブースにいた現地女性アルバイト2名が、BMWの従業員である外国人男性(後に同社が主張)にアイスクリームを与え、そうでない地元の志願者には与えなかったというもの。

この様子を見ていた中国人男性がSNSに動画を投稿し、「BMWが中国人差別している」と非難した。そしてこの動画が瞬く間に拡散され、多くの中国人ネットユーザーからも「BMWは中国市場を軽視している」「BMWを買わない」といった批判や抗議の声が上がった。関連するハッシュタグは、事件が起きた3日後で、微博で1億9000万回以上のビューと1万1000件の議論を集めた。

2年に1度の上海モーターショーは、中国では最大の自動車イベントの1つであり、国際的な自動車メーカーにとっては、競争が激化する市場で最新の製品を披露するチャンスだった。

BMW内部の担当者は、今回の騒動に頭を抱えたに違いない。この事件は、中国における外国ブランドの効果的な危機管理と文化的な感受性を理解することの重要性を浮き彫りにした。

BMWだけじゃない。中国で起きたさまざまな炎上事例

中国が国境を開放し、Covid-19の制限をすべて撤廃したことで、多くの海外企業は、この経済大国がもたらすチャンスとチャレンジに改めて注目している。

一方で、マーケターや広報担当者には多くの課題がある。今回のような騒動はこれまでにも何度も起きている。

例えば、2017年、ドイツの高級自動車アウディは、花嫁を中古車に例えて、将来の義母に欠点を点検してもらうという性差別的なCMを放映したことで、謝罪をしなければならない事態に陥った。その1年後、メルセデス・ベンツは、共産党が危険な分離主義者とみなす亡命チベット人精神指導者ダライ・ラマの言葉を引用したInstagramの投稿で、中国の消費者から非難を浴びた。

2018年にはイタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナ(D&G)が批判を集めた。

ドルガバは上海でのファッションショーに先駆けて、中国人モデルがイタリア料理を箸で食べるのに苦戦するという内容の動画を公開した。

しかしこの動画が、人種差別的な内容だとして非難を集めた。

さらに、共同創設者ステファノ・ガッバーナのインスタグラムのアカウントから送信された「これから世界的なインタビューを受けるときは、必ず中国はクソだということにするよ」や「無知で汚く、臭う中国マフィア」といった内容の中国人に対する侮辱的なメッセージが流出した。

ドルガバは謝罪声明を発表すると同時に、SNSのアカウントがハッキングされていたと主張したが、ショーは開始数時間前にキャンセルされた。

アリババをはじめとする中国の主要EC企業が各社のECサイトからドルチェ&ガッバーナ製品を削除。ステファノとドルチェの2名は謝罪動画を公開したが、中国市場での取り返しのつかない打撃を受けた。

出典:ドルガバの公開した動画より(現在は削除されている):イタリア料理を箸で食べる中国人モデル