2024/07/08
防災・危機管理ニュース
国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会のピチャモン・イェオファントン専門委員は7日までに時事通信のインタビューに応じた。日本の重要課題として「性差などに関する根深い社会通念が差別と不平等を生み出す構造を早急に解体すべきだ」と強調。社員のやりがいの低下を防ぐには「安心できて、尊重されていると感じられる職場環境の確保が取り組みの中心となる」と話した。
作業部会は6月下旬、日本の企業活動に伴う人権侵害やその改善への取り組み状況に関する調査報告書を国連人権理事会に提出。イェオファントン氏はその策定に主導的な役割を果たした。同氏は日本政府と企業の取り組みに関し「前向きな進展」が見られると評価。一方で女性や障害者、性的マイノリティー、外国人労働者、先住民族や被差別地区を巡る職場差別に懸念を表明した。
その上で、企業での多様性の確保に関し「会議の場に女性がいたとしても、安心して懸念や自分の考え方を共有する機会が与えられなければ、参加したとは言えない」と指摘。障害者に対する差別的待遇の実例としては「隔離された場所で単純労働に従事させられているとの報告を多数受けている」と明かし、それぞれの特性に合った役割が与えられるべきだとの考えを述べた。
外国人労働者を巡っては、労災事故が起きた際に速やかに医療を受けられなかったり、抑圧的な環境下で自殺に追い込まれたりした例もあると危惧した。
報告書は政府に独立した国内人権機関の迅速な設置を要請した。イェオファントン氏は、労働者がトラブルに直面した際に「救済」を受けられる独立人権機関が設置されていれば、旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.)の性加害問題も「深刻になる前に対処できた可能性がある」と指摘した。
また、政府が2020年に策定したビジネスと人権に関する行動計画の改定作業を進めていることを評価する一方、現行計画に関する認知も地方では進んでいないとして、政府は周知に努めるべきだと強調した。
〔写真説明〕インタビューに答える国連人権理事会作業部会のイェオファントン氏=3日、東京都中央区
〔写真説明〕インタビューに答える国連人権理事会作業部会のイェオファントン氏=3日、東京都中央区
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方