2024/11/06
防災・危機管理ニュース
エスカレーターの正しい利用法を浸透させる取り組みが広がっている。埼玉県と名古屋市が立ち止まることを条例で義務付けたほか、福岡市は歩行防止策の実証実験を進めている。立ち止まることは本人の転倒防止だけでなく、身体が不自由な人への配慮にもつながるといい、推進団体は「思いやりのある社会になって」と訴える。
エスカレーターでは、片側に並び片側を歩く風景がよく見られる。ただ製造を手がける日立ビルシステム(東京都千代田区)によると、エスカレーターはそもそも歩くことが想定されていない。段差は建築基準法が定める通常の階段より段差が大きく設計されており、歩行は転倒の恐れがある。
さらに東京都理学療法士協会(渋谷区)によると、脳卒中などでまひが残る人が利用する際、左右どちらかの手すりしかつかめない場合がある。つえを使う高齢者の中にはバランスが取りにくいため、隣を歩かれると怖く感じる人もいるという。
協会は「わけあってこちら側で止まっています」と記したキーホルダーを作り、約8000個を配布。担当者は「どんな人でも安心安全に利用できる思いやりのある社会になってほしい」と願う。
取り組みは行政でも進む。埼玉県では2021年10月、名古屋市では23年10月に立ち止まることを義務付ける条例がそれぞれ施行された。罰則はないが、同市が今夏に行った調査では立ち止まる人の割合は過去最高の93.3%に上がった。
福岡市は、市営地下鉄のエスカレーターで立ち止まってもらうための有効策を公募。人工知能(AI)を活用し、歩いている乗客に注意を促す音声をスピーカーから流す事業を想定する。実証実験を進めており、来年度から導入予定という。
エスカレーターの利用法に詳しい文京学院大(東京)の新田都志子名誉教授は、移動を急ぐ人には階段利用を推奨する。その上で「善意と思って片側を空ける必要はない。利用者の安全や輸送効率を高めるためには、両側に立ち止まって乗ることが重要だ」と話している。
〔写真説明〕障がい者らが安全安心にエスカレーターを利用できるように作られたキーホルダーのデザイン(東京都理学療法士協会提供)
(ニュース提供元:時事通信社)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/10
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
-
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方