2024/12/06
防災・危機管理ニュース
海洋研究開発機構は6日、探査船「ちきゅう」により9月から宮城県沖の日本海溝沿いで行っていた掘削調査が順調に進み、予定の大半が終わったと発表した。2011年の東日本大震災の地震を引き起こしたプレート境界断層を再び掘削し、周辺からかかる力や温度を測定するとともに岩石を採取。大地震に至る過程の解明が進むと期待される。
日本海溝では陸側プレートの下に海側プレートが年間約10センチのペースで沈み込み、プレート同士の境界にひずみがたまり続けている。震災時はこの境界が広い範囲で急に滑って大地震と津波が発生。ひずみはいったん解消されたが、長期的に見ると再びたまり、将来の大地震につながると考えられている。
海洋機構などは12年、宮城県沖のプレート境界断層をちきゅうで初めて掘削し、岩石を採取した。昔の火山灰から変わった岩石が多く含まれていたほか、急に滑った際の摩擦熱で水分が膨張したため、ずれ動きやすくなったと推定された。
今回はプレート境界断層の岩石のほか、その上下の岩石や、海側プレートが沈み込む前の岩石も採取し、比較できるようになった。震災後、プレート境界の浅い部分に既にひずみがたまり始めているかが焦点で、海洋機構の小平秀一理事は「疑問に答えることができる地質試料や計測データの取得に成功した」と話した。
ちきゅうは9月には、水深6897.5メートルの海底下を980メートル掘削。海面からの深さは計7877.5メートルとなり、12年に達成した海洋科学掘削の世界記録を更新した。
〔写真説明〕宮城県沖に向け出港する海洋研究開発機構の探査船「ちきゅう」=9月6日、静岡・清水港(海洋研究開発機構・IODP提供)
〔写真説明〕日本海溝沿いのプレート境界断層から採取した岩石を調べる研究者ら。東日本大震災の震源域では2012年に続き2回目=10月28日、宮城県沖の「ちきゅう」船上(海洋研究開発機構・IODP提供)
(ニュース提供元:時事通信社)


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