「2025年問題」
10年先を見据えた高年齢者雇用の見直し
労働者不足の解消策

毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2025/02/14
ニューノーマル時代の労務管理のポイント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2025年は、「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になる年です。超高齢社会の訪れにより懸念されるのは、社会保障費の負担増加や医療・介護体制の維持困難、労働力不足などの「2025年問題」です。団塊ジュニア世代が65歳を超え始める2040年以降は、更なる悪化が想定されます。企業は深刻な労働力不足を解消するため、定年制度の見直しや再雇用の待遇改善に動き出しています。
定年制度の見直しや定年後の再雇用での待遇を改善する動きは、すでに数字に表れています。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の、65歳までの雇用を目的とした高年齢者雇用確保措置から見ていきましょう。企業はこの措置として「定年制の廃止」、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかが義務づけられています。
厚生労働省の令和6年「高年齢者雇用状況等報告」によると、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%におよびます。その内訳は「定年制の廃止」が3.9%、「定年の引上げ」が28.7%、「継続雇用制度の導入が67.4%となっています。また、定年を65歳以上に設定している企業(定年制の廃止を含む)は32.6%で、70歳までの就業確保が目的である高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%でした。
また、内閣府の「令和6年度年次経済財政報告」によると、定年前後の賃金比較で「ほぼ同程度」が15%、「8から9割程度」が24%、「6から7割程度」が45%、「4から5割程度」は6%となっており、特に人手不足感が高く、年齢構成のばらつきが拡大した業種では、再雇用時の賃金低下幅が縮小しているとの分析が示されています。
これらの資料から、知識と経験を有する高年齢者の活用を図る企業が増えていることがわかります。
高年齢者就業確保措置
高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保を目的とした高年齢者雇用確保措置に加えて、70歳までの就業機会確保を目的に、努力義務として先にあげた高年齢者就業確保措置を課しています。以下がその内容です。
原則、全希望者を雇用
高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入している企業では、定年後の勤務を希望した社員全員を雇用し続ける必要があります。しかし例外があり、2021年度までの労使協定により継続雇用制度の対象を限定する基準を定めた場合は、2025年3月31日までその基準での運用が認められています。2025年4月からは経過措置の終了により、原則として、希望者全員の雇用が必要となります。
ニューノーマル時代の労務管理のポイントの他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方