2025/04/28
防災・危機管理ニュース
「この瞬間から、米国の衰退は終わる」
1月20日の就任演説でこう宣言したトランプ大統領は、不法移民の追放、諸外国への関税、海外支援の打ち切り、人種・ジェンダー政策の見直しなどを矢継ぎ早に実行に移してきた。そこには自らを「復古主義のリーダー」と位置付ける世界観がある。
◇国力の低下
「米国衰退論」は、その是非や真偽を巡り、長きにわたって議論が繰り返されてきた。
トランプ氏自身は日本やドイツの経済的な台頭に直面した1980年代後半以降、米国の衰退を唱えている。レーガン元大統領(在任81~89年)は選挙キャンペーンで「米国を再び偉大にする」という政治スローガンを用いた。
米国は90年代、旧ソ連との冷戦に勝利し、超大国として君臨した。しかし2001年9月の米同時テロ、08年のリーマン・ショックなどを経て、相対的な国力の低下は否めなくなった。オバマ元大統領は13年に「米国は世界の警察官ではない」と表明。各種世論調査によると、21世紀に入ってから米市民の6割以上が「米国は正しい道を進んでいない」と感じている。
◇過去は幻想
衰退論への反対も根強い。米国は現在でも世界最大の覇権国だからだ。23年の実質GDP(国内総生産)は世界最大で、2位の中国の約1.3倍。国防費(24年)は同約4倍で、他国の追随を許さない。経済成長率や出生率は先進7カ国(G7)でトップクラスでもある。
ボストン大のスロボディアン教授(国際関係史)は、政治家がより良い時代が過去にあったと主張する理由について、「自分の政策を正当化するためだ。例えば、トランプ氏が称賛するマッキンリー大統領(在任1897~1901年)は高関税と拡張主義を推進した」と指摘。その上で「その時代が今日と比べて裕福だったわけではないし、米国は多くの場合、望むものを得られてこなかった。『過去の栄光』は幻想にすぎない」と言い切る。
◇レジリエンス
米国は今も多くの課題を抱えている。シンクタンク、ランド研究所は24年4月に公表した報告書で「米国は生産性の伸びの鈍化、高齢化、政治の分断、中国の台頭などの脅威にさらされており、このままでは相対的な国力衰退が加速する」と警告している。しかし、この種の課題は新しいものではなく、歴代の指導者は米国の「レジリエンス(回復力)」によって困難を克服できると訴えてきた。だからこそ「米国は例外的な国」(オバマ氏)なのだと。
一方、トランプ氏の経済観を研究したダートマス大のミラー准教授は、「彼の主張の中核は歴代政権や米国の仕組みが衰退を招いたという批判であり、自分だけが問題を解決できる『特別で強力な存在』という感覚を社会に生み出そうとするものだ」と分析する。
トランプ氏は米国のレジリエンスにもあらがっている。(ワシントン時事)。
〔写真説明〕26日、米東部ニュージャージー州の空港で、報道陣にガッツポーズをするトランプ米大統領(AFP時事)
〔写真説明〕ワシントンの米連邦議会前で、星条旗を逆さに掲げて抗議する市民=3月4日(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)


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