Q. 日本では、第二期トランプ政権の誕生で、「台湾有事」への警戒が一層強まり、台湾・中国に拠点を持つ企業は退避計画の再整備を急いでいます。この点を米国企業はどう捉えていますか。

2022 年8月、ナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問を機に緊張が高まり、多くの米企業が台湾シナリオを再点検しました。

ただし、現在は、当時の「緊急フェーズ」は落ち着き、台湾有事を巡る不確実性は前提条件として織り込まれています。

もっとも、通信途絶や航空機のニアミスなど偶発的エスカレーションのリスクは残ります。問題は、そうした危険を大統領に進言できる人物がいない点で、その備えは十分とは言えません。

Q. アメリカ企業を含むグローバル企業は、現在、具体的にどのような地政学リスク対策を講じているのでしょうか。特にトランプ政権の発足前後でどのような変化が出ているのでしょうか?

まず、挙げられるのがサプライチェーンの再ルーティング・多元化です。この動きは、COVID-19でのロックダウン時に中国依存の脆弱性が顕在化したときから本格化したと言えます。さらに関税の動きも後押しして、生産・調達の分散が加速しました。

もう1つが、企業内に地政学分析チームを新設する企業が増えています。外部コンサルも入れながら、より複雑な国際情勢・地政学を企業として読み解けるよう、社内に情報収集・シナリオ分析機能を構築しているのです。

その意味で、事業継続(BC)部門が、戦略部門化しました。過去にディザスターリカバリーの動きが高まったときと同じように、サプライチェーンの寸断や政治リスクの影響を前提に、長期戦略を描くことがBC部門には求められるようになってきました。BCは、企業の中心的な役割を果たすようになったと言えます。