大阪市の繁華街・道頓堀の雑居ビルで消防隊員2人が死亡した火災で、延焼拡大の要因と推定されている外壁広告の素材について、建築基準法に「不燃材料」と規定があるものの、行政のチェックは書類手続きのみで、現物確認が行われていないことが26日、分かった。専門家は「書面だけで許可するのは安易だ」と指摘している。
 市消防局によると、火災は18日午前、ビル1階から出火し、外壁の装飾広告を伝って上方へ延焼した。隣接するビル5階の窓ガラスが焼損し、建物内に延焼したとみられている。
 元東京消防庁麻布消防署長で、公益財団法人「市民防災研究所」の坂口隆夫理事は「広告が延焼経路になると、上の階や隣接する建物に延焼しない造りの耐火構造の長所が無駄になることが今回の火災で分かった」と話す。
 火災現場の道頓堀川沿いは、「グリコサイン」のような巨大看板や広告を設置したビルが多数並ぶ。建築基準法は、3メートル以上の広告物について「主要な部分を不燃材料で造らなければならない」と規定し、違反した場合には罰則もあるが、現物確認は義務付けられていない。
 市の屋外広告物条例に基づく設置申請でも、素材や大きさは詳細に記載しなければならないものの、現物確認はしていない。市によると、今回焼けた看板の材質は防炎製品の「ターポリン」と記されていた。メーカーが性能評価を受け、不燃材料として大臣認定を受けていれば適法な素材とされる。市は焼けた広告の素材が適法だったかなども詳しく調べる。 
〔写真説明〕火災のあった繁華街「道頓堀」のビル=20日、大阪市中央区

(ニュース提供元:時事通信社)