瀬戸内海で行われる夏の花火大会で、観覧する船の事故が多発している。夜間で見通しの悪い帰港時に、特産であるカキの養殖いかだに乗り上げるケースが多いといい、第6管区海上保安本部(広島市)が注意を呼び掛けている。
 7月19日、広島県呉市の呉港湾内で行われた海上花火大会では、打ち上げ台船の周りに小型船や観光フェリー約80隻が集まり、呉海上保安部の巡視艇など4隻が警戒に当たった。港湾内では定期フェリーも航行し、大会終盤には航路上にいた小型船と衝突しそうになった。20秒近く警告音が鳴り響き、同保安部内に一時緊張が走った。
 花火大会に関連して2005~24年に起きた船舶事故は、6管の管区内が92隻と最多で、第3管区(横浜市)の68隻、第5管区(神戸市)の42隻を大きく上回った。6管内の事故の8割は花火大会終了後の帰港中の事故だった。
 瀬戸内海には島や浅瀬が多く、カキいかだも多数設置されている。広島県はプレジャーボートの登録数が全国で最も多い一方、海保によると、昼間の航行に慣れていても、夜間の経験は浅い人が多いという。
 17年には尾道市で、花火大会帰りの船が防波堤に衝突。乗っていた10人が甲板に投げ出されるなどして軽傷を負った。船長は防波堤の存在を知っていたものの、夜間の経験が少なかった。
 広島県内では350隻以上の船が集まる大規模な花火大会もある。6管の担当者は「海上では見張りを厳重にし、安全に花火を楽しんでほしい。夜間航行に不安があれば、船での観覧は自粛することも必要だ」と話した。 
〔写真説明〕花火台船(手前)の周りに集まる小型船や観光フェリー=7月19日、広島県呉市の呉港
〔写真説明〕呉港湾内で行われた海上花火大会=7月19日、広島県呉市

(ニュース提供元:時事通信社)