東日本大震災の被災者向けに宮城県が設置した「みやぎ心のケアセンター」が、9月末で事業を終了する。同月上旬までの約14年間で対応した相談は約6万3000件に上り、今後は各自治体などが事業を引き継ぐ。
 センターは大震災発生から9カ月後の2011年12月、仙台市に開設された。12年4月には同県の石巻、気仙沼両市に地域拠点が開所。精神科医や精神保健福祉士らが集まり、多い時には3カ所で計約50人が被災者の心のケアに当たった。
 渡部裕一副センター長(55)は開所当初について、人手の集め方やセンターの周知方法など分からないことだらけで、「何もかも手探りだった」と振り返る。開所前、阪神大震災(1995年)と中越地震(2004年)を機に神戸、新潟両市に建てられた被災者の心のケアを担う施設を視察し、働くイメージがようやく浮かんだという。
 センターには当初、「住む場所がない」「仕事がない」などの相談が多かった。ただ次第に、配偶者などによる暴力(DV)やアルコール依存、引きこもりなどに関する内容が増えたという。
 センターはもともと、20年度に閉じる予定だったが、19年度時点で相談が年約6000件と高い水準だった。そのため県は20年度、センターの開所期間を延長し、25年度に事業を終える方針を決めた。閉所が決まって以降は、保健師などによる訪問相談に自治体の担当者が同行するなどして引き継ぎを進めてきた。
 渡部氏は「センターはあくまで緊急の施設だ。私たちがずっと支援するのではなく、自治体で人を増やしたり、県がバックアップしたりし、本来の仕組みの中で対応しなければならない」と話す。
 一方、これまでに得たケアなどのノウハウは、他の自治体がいつでも参照できるよう資料としてまとめ、ホームページに掲載する予定だ。渡部氏は「私たちがセンターをつくる時も苦労した。少しでも資料や知見を役立ててもらいたい」と話している。 
〔写真説明〕9月末で事業を終了する「みやぎ心のケアセンター」=1日、仙台市青葉区
〔写真説明〕9月末で事業を終了する「みやぎ心のケアセンター」内の掲示物=1日、仙台市青葉区
〔写真説明〕取材に応じる「みやぎ心のケアセンター」の渡部裕一副センター長=1日、仙台市青葉区

(ニュース提供元:時事通信社)