近年、世界各地で林野火災が相次いでいる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2022年に公表した報告書で、火災と気候変動の関係に言及。専門家は、出火後の大規模化にも注意を促している。
 米NPO「世界資源研究所(WRI)」によると、23年と24年に林野火災によって排出された温室効果ガスは二酸化炭素に換算すると、それぞれ40億トンを超えた。これは世界3位の排出国であるインドの年間排出量と同じ水準で、さらに温暖化を加速する要因にもなる。国連環境計画(UNEP)は、温暖化のほか、農業開発をはじめとした土地利用の変化により、大規模な林野火災のリスクは50年末までに現状(10~20年)と比べて30%、今世紀末までに50%増えると予測する。
 京都大学防災研究所の峠嘉哉特定准教授(水文学)によると、林野火災の発生リスクは、乾燥、風速、気温などの気象条件や樹木の燃えやすさが複合的に絡み合って決まる。今年、岩手県大船渡市で発生した大規模火災は、降水量が極端に少なかったことが一因となった。気候変動と個別の火災を関連付けるにはさらなる研究が必要だが、地表が雨によって湿って出火を抑制している状態が気温上昇で変化し、乾燥が進めば、火災が発生・大規模化しやすくなる可能性があるという。
 そこで、峠氏は「出火させないことが第一義」と強調する。実際に、峠氏らの研究チームは、市町村ごとに林野火災の発生リスクを予測し、可視化するシステムを開発中。将来的には予報や警報への活用を目指す。 
〔写真説明〕スペイン北西部、ポルトガルとの国境近くの村で起きた山火事の消火活動に当たる消防士=8月12日(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)