東日本大震災の復興支援で福島県いわき市に派遣され、うつ病を発症したのは長時間労働などが原因だとして、元東京都渋谷区職員の男性(62)が地方公務員災害補償基金に公務外認定を取り消すよう求めた訴訟の控訴審判決が29日までに東京高裁であった。谷口豊裁判長は請求を棄却した一審判決を取り消し、公務災害と認めた。24日付。
 判決によると、男性は2016年4月に同市に派遣され、家屋の固定資産税評価などに従事した。17年2月に同じ課で勤務する同僚が自殺し、3日後にうつ病と診断された。
 一審東京地裁は、男性の直近1カ月間の時間外労働は100時間に満たないと判断。男性は同僚の自殺に責任を負う立場ではなく、強い精神的負荷とまでは言えないとした。
 これに対し谷口裁判長は、行政端末への接続時刻を始業時間として計算すると、時間外労働が100時間を超えていたと認定。同僚の自殺も「一定の精神的負荷を与えるものだ」として、公務とうつ病の因果関係を認めた。
 男性は29日に都内で記者会見し、「発症したら自己責任というのはおかしい。判決に感謝している」と話した。基金側は「判決内容を精査し、今後の対応を検討する」とコメントした。 
〔写真説明〕東京高裁=東京都千代田区(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)