2025/09/30
防災・危機管理ニュース
改正鳥獣保護管理法が今月施行され、市街地にクマなどが出没した際、市町村の判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」制度が始まった。ただ、出動したハンターの発砲を巡り、猟銃の所持許可が取り消されたことがある北海道では対応が割れる。銃を使わず「箱わな」で対応する地域もあり、道猟友会は「自治体の要請を断ることもできる」と慎重な姿勢を見せる。
市街地での発砲はこれまで原則禁止されていたが、クマなどによる人身被害が相次いだことを受け、改正法はクマとイノシシを対象に、市町村が周囲の安全を確保すれば委託されたハンターが発砲することを可能とした。人や建物などに被害が出た場合は、国や市町村が賠償責任を負うとされる。
道猟友会は施行直前の8月29日、改正法の規定では人身事故発生時に発砲したハンターの責任が問われる可能性が残るとして、全71支部に対応を通知。環境省が作成したガイドラインを基に、自治体が安全と判断した場所でも、ハンターが疑念を持った場合は猟銃使用の中断や中止ができるとした。道猟友会の堀江篤会長は「市民のために協力はするが、不安を持って発砲はできないから断ることもある」と話す。
慎重な姿勢の背景には、2018年に砂川市の要請でヒグマを駆除したハンターが、「周辺の建物に銃弾が当たる恐れがあった」として猟銃の所持許可を取り消されたことがある。ハンターは処分取り消しを求める訴訟を起こし、最高裁で係争中。このため猟友会砂川支部は、法施行後も銃は使わず、箱の中に餌を置いておびき寄せる「箱わな」での捕獲・駆除を続ける方針だ。
一方、市街地での駆除経験が多い札幌支部では、これまでも札幌市や警察と連携する体制を整備。ハンターがいったんは発砲の中止を判断した場合でも、市などが別の発砲場所を提案するなど協力を重ねてきており、新制度にも積極的だ。同支部ヒグマ防除隊の玉木康雄隊長は「最終的に引き金を引くのはハンターだが、前提条件を整えるのは警察や行政。彼らと一緒に引き金を引く気持ちがないといけない」と訴えた。
〔写真説明〕箱わなで捕獲されたヒグマ=17日、北海道砂川市(北海道猟友会砂川支部提供)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-
-
-
第二次トランプ政権 未曽有の分断の実像
第二次トランプ政権がスタートして早や10カ月。「アメリカ・ファースト」を掲げ、国益最重視の政策を次々に打ち出す動きに世界中が困惑しています。折しも先月はトランプ氏が6年ぶりに来日し、高市新総理との首脳会談に注目が集まったところ。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に、第二次トランプ政権のこれまでと今後を聞きました。
2025/11/05
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/11/05
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方