改正鳥獣保護管理法が今月施行され、市街地にクマなどが出没した際、市町村の判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」制度が始まった。ただ、出動したハンターの発砲を巡り、猟銃の所持許可が取り消されたことがある北海道では対応が割れる。銃を使わず「箱わな」で対応する地域もあり、道猟友会は「自治体の要請を断ることもできる」と慎重な姿勢を見せる。
 市街地での発砲はこれまで原則禁止されていたが、クマなどによる人身被害が相次いだことを受け、改正法はクマとイノシシを対象に、市町村が周囲の安全を確保すれば委託されたハンターが発砲することを可能とした。人や建物などに被害が出た場合は、国や市町村が賠償責任を負うとされる。
 道猟友会は施行直前の8月29日、改正法の規定では人身事故発生時に発砲したハンターの責任が問われる可能性が残るとして、全71支部に対応を通知。環境省が作成したガイドラインを基に、自治体が安全と判断した場所でも、ハンターが疑念を持った場合は猟銃使用の中断や中止ができるとした。道猟友会の堀江篤会長は「市民のために協力はするが、不安を持って発砲はできないから断ることもある」と話す。
 慎重な姿勢の背景には、2018年に砂川市の要請でヒグマを駆除したハンターが、「周辺の建物に銃弾が当たる恐れがあった」として猟銃の所持許可を取り消されたことがある。ハンターは処分取り消しを求める訴訟を起こし、最高裁で係争中。このため猟友会砂川支部は、法施行後も銃は使わず、箱の中に餌を置いておびき寄せる「箱わな」での捕獲・駆除を続ける方針だ。
 一方、市街地での駆除経験が多い札幌支部では、これまでも札幌市や警察と連携する体制を整備。ハンターがいったんは発砲の中止を判断した場合でも、市などが別の発砲場所を提案するなど協力を重ねてきており、新制度にも積極的だ。同支部ヒグマ防除隊の玉木康雄隊長は「最終的に引き金を引くのはハンターだが、前提条件を整えるのは警察や行政。彼らと一緒に引き金を引く気持ちがないといけない」と訴えた。 
〔写真説明〕箱わなで捕獲されたヒグマ=17日、北海道砂川市(北海道猟友会砂川支部提供)

(ニュース提供元:時事通信社)