新旧二重の分断が共存する日本独特の構造とは(イメージ:写真AC)

日本社会の分断構造

分断構造を語る際の題材として、米国大統領トランプ氏周辺の動向や、欧州で極右と称されるドイツのための選択肢(AfD)などの勢力分析が語られることが多い。その根底には欧米の植民地支配の歴史や有色人種への人権侵害のしっぺ返しともいえる移民問題、行き過ぎたポリコレ、利権化した環境や人権、そして一神教による宗教観の違いによる排他性などがあることは誰も疑わないだろう。

これらのことは、わかっていても解決策はそう簡単ではなく、分断が生じるのは当然ともいえる。

日本の分断は欧米の影響か(イメージ:写真AC)

日本においても、周回遅れ感はあるものの、同様の分断構造が進展しているといってよいだろう。しかし、よく考えると、前述の要因のほとんどは日本という国家には関係しない事象といっても言い過ぎではない。ならば、単に欧米の影響下に置かれて振り回されているだけなのだろうか。

これについてはさまざまな視点での分析が必要であり、答えは一つではないだろうが、筆者の視点で一つの意見として斬り込んでいきたい。

このコラムを書いているのは、自民党総裁選挙の真っただ中である。みなさんがお読みいただく頃には結果が出ているだろうが、筆者は結果を知り得ない状態で書いている。別段予測を書くわけではないので問題はないのだが、内心ドキドキではあることをお含み願いたい。

右から左まで幅が広い自民党といわれるが、その通り、米国でいう民主党と親和性が高いと思われる岸田政権から、さらに左に振れた石破政権、前回決選投票で敗れた高市候補は米国共和党と近かった安倍元総理の後継ともいわれる人物である。

総裁選から日本の分断の特殊性が見えてくる(イメージ:写真AC)

今回の自民党総裁選挙も相当幅広い候補者が争っている。これは政権与党の総裁選挙ではあるが、事実上の内閣総理大臣の選任というのならば、米国でいう大統領選挙に等しい意味を持つといってもよいのが現実であろう。つまり、この選挙は国民の声を反映した民主的なものである必要がある。

ところが、直近の参議院議員選挙や昨年の衆議院議員選挙、都議会議員選挙の動向を見れば、かつての自民党支持構造は崩れていて、国民の期待の声を背負うかたちで欧州と同じように新しい保守勢力が支持を集めているのは誰の目から見ても明らかだ。いや、『誰の目から見ても』というのは実は間違いだというところに、新しい分断構造が存在するというほうが適切かもしれない。

つまり、実質的に国家としてのトップを争う分断構造と、社会全体の分断構造が別々に存在し、新旧分断構造として共存しているのが現在の状況と感じるのである。