グローバル社会における分断が目に見えて顕著に(イメージ:写真AC)

グローバル環境の分断構造

グローバル社会において、価値観の違いによる分断が顕著になってきていると巷でいわれて久しい。そして、よく聞こえてくるのが、米国大統領トランプ氏が分断の張本人であるという説である。だが、現実はどうなのだろうか。

人が集まれば価値観や意見の相違は必ず起きる(イメージ:写真AC)

そもそも価値観の違いは、国家や民族、宗教感をベースに根本的な違いがある。そのうえに個々人の思想信条は千差万別である。そう考えれば、人が複数集まればグループが生まれ、意見の相違も必ず起きる。これを分断の原因とするならば、人が人である限り自然発生的に起きる現象と考えてよい。

ならば、現代の分断構造の責任をトランプ氏一人に負わせるのは筋違いだろう。価値観の違いがあるから、反対勢力からの攻撃として批判の材料にされていると考えるべきだ。すなわち、分断があるからトランプ氏に票が集まり、反対派からの攻撃も受けるだけである。

ではなぜ、トランプ氏が政界に現れる頃からこの分断が生まれたように見えるのか。それまでもあったはずの分断なのに、だ。

分断があるからトランプ氏に票が集まり、反対派からの攻撃も受ける(イメージ:写真AC)

この件は筆者が以前から申し上げていたことであるが、情報構造の変化によるところが大きいと考えている。すなわち、オールドメディアが独占してきた情報環境が分断を構成する一勢力に過ぎず、新たな情報環境の担い手であるネット空間がオールドメディアの情報も、それ以外もオープンに発信し始めたため、多くの人の目から分断構造の「見える化」が起きたのである。

ただ、矛盾するかもしれないが、筆者自身はこのことに実は大きな疑問を持っている。それは、オールドメディアもこの構造変化に気付いていないはずがないのに、ネット規制の必要性を訴える敵対的な反応が目立ち、自らこの構造変化に適応していく姿勢がまったくといってよいほど見えてこないからである。

オールドメディアにもイデオロギーや主義主張はあるだろうが、ビジネスである限り、いやビジネス視点で考えれば、オールドメディアの立場でのオープンな情報発信はブルーオーシャン領域である。いち早く対応すれば、先行勝ち逃げが可能だと思えてならない。

とはいえこのことは、筆者もいまだ分析不足で、確固たる考えを示せない状態だ。今後、ここに陥る根源を考察できる分析を続けていきたいと考えている。

話を戻すと、グローバル環境で見える化された分断構造は、世界的に起きている。だが、日本ではその政治環境の違いからなのか、グローバルとは少し異なる動きを示している。これが周回遅れで追随するのか、まったく異なる方向に収斂(しゅうれん)していくのか、現時点で確信は持てない。しかし、グローバルとの相違点を理解しておかないと、それによって発生する衝突や軋轢によるリスクが見えてこないだろう。

変化はピンチでありチャンスにもなる。日本のビジネス環境がオールドメディアと同じくこの変化を無視するようでは、日本経済に悪影響を及ぼしかねない。