高市新政権が大きな期待を背負ってスタートした(写真:Adobe stock)

高支持率も前途多難な船出

高市早苗氏が第104代内閣総理大臣に選出された。生みの苦しみというべきか、石破前総裁の責任論から始まる政局は、自民党総裁選後もさらに混迷を極めた。それを制するかたちで総理の座を勝ち取り組閣をした瞬間に、一部の調査では支持率70%、若者層では80%を超え、その後の外交デビューでさらに上昇、80%を超える期待を背負っての船出だ。

しかし、現実を直視すれば前途多難であり、混迷状態はなんら解消されたわけではない。古い分断構造の最後の足掻きが苛烈になると予想できる。

BSテレビで「死んでしまえと言えばいい」との大御所MCの発言が放送された。謝罪したが、再発防止を想定した反省に感じないのは筆者だけだろうか。テロを助長しかねない内容にも関わらず、だ。

高支持率の半面、抵抗も強い(写真:Adobe stock)

「支持率下げてやる」という報道カメラマンの発言を裏付けるような「ダッチアングル」という手法を使った映像が公共放送で放映され、ほかにもいくつかのメディアで使われた。ホラー映画などで使われる手法で、人を不安に陥れる心理効果を持つ。プロの報道マンが知らないはずがなく、明らかに意図的に使っているのだ。

別のニュースでは、不支持率が実際よりも高い値になったグラフを使用していた。ミスというにはあまりにお粗末、印象操作といわれても仕方がない。

何はともあれ、この種の攻撃は今後も激しさを増すだろう。しかし、これらはもう滅びゆく最後の足掻きといっても過言ではない。見苦しさもともなったこの攻撃は、ネットの情報社会で白日の下に晒され、あまりの酷さにむしろ支持率を上げる方向に影響していると考えるべきだろう。

古き分断構造を制することができるか、それとも共倒れになるか(写真:Adobe stock)

そうであれば、この自民党内にも現存する古き分断構造を名実ともに制することができるか、それとも古き分断とともに崩壊するか、その瀬戸際に高市政権は置かれていると感じる。現時点の支持率の構造を見ると、政権の支持率は爆増しているが、自民党の支持率はそれほど上がっていないのだ。

『悪夢の民主党政権』と揶揄される状態から自民党が政権奪還した後も、この悪夢は人々の心に根強く残った。今回は『悪夢の岸波政権』からの政権奪還と位置付けられるだろうから、この悪夢の再現を阻むことが求められる。しかも、前回の悪夢は民意で決した結果だが、今回の悪夢は、民意を無視したかたちで自民党内の政権交代で起き得るのだから質が悪い。

早速、新政権が年内にガソリン暫定税率廃止をいいながら、自民党税調は早くて来年2月、しかも恒久的増税財源ありき、さらには高校無償化の財源とセットとまでいった。明らかに総裁の方針に反する発言である。

これは前政権時の閣議で決した「骨太の方針」が官僚主導で定まっていることに起因しているかもしれないが、国民目線ではあずかり知らない話だ。確かに次回の「骨太の方針」からは政治主導に取り戻そうとする人事に見えるが、それを待っていられないのが日本の実情である。