自民党総裁選後、さまざまな政治騒動がマスメディアに映し出されているが、そこから見える分断構造とは(写真:Adobe stock)

古い分断構造を象徴する自民党総裁選

自民党総裁選挙で、大方の予想を裏切り高市早苗氏が選ばれた。マスメディアは大逆転劇と報じている。だが、冷静に1回目投票と決選投票の票数を見る限り、順当な結果であり、「大逆転」と報じること自体が、古い分断構造の断末魔の叫びに聞こえてくる。

筆者の個人的な感じ方かもしれないが、投開票までの間、オールドメディアはこぞって小泉候補優勢を報じていた。それこそ議員票の予測が圧倒的に優勢といい、昨年高市氏を推した麻生元総理すら「今回は小泉でいいだろう」という発言をしたように、まことしやかに伝えている。それほどオールドメディアは必死さを隠せず、一方、ネットを中心とする情報環境は比較的静かだったと思う。

総裁選の報じ方に変化(写真:Adobe stock)

昨年の自民総裁選時は、ネット界隈は「女性初の宰相誕生」「保守現実派の政権誕生間近」と色めき立っていた。その勢いを受けて1回目投票で党員党友票を大幅に伸ばしただけでなく、議員票も予想を上回る数を獲得して高市氏が1位になった瞬間、株の先物市場が高騰を始めた。ところが、決選投票で議員票が石破氏に大量に集まったことで逆転劇が起き、高騰した市場は暴落を始めた。

この逆転劇は、多くの国民の目線では、自民党内部の閉ざされた空間内の権力闘争劇にしか見えなかった。かつても事実上の日本国総理を選ぶ自民総裁選の是非は問われていたのは事実だが、それは所詮、政治に関心を持つ一部に限られていた。

永田町の論理が多くの人の目に見えるようになっている(写真:adobe stock)

それが、ネットの情報空間が幅広く情報を配信することによって、多くの人に知られるようになった。しかも、昨年の総裁選はネット空間で活況に沸いたのだから、その反動は大きいのは当然の現象であり、今年の総裁選で「まただろう」という諦めにも似た感情でネット空間が比較的静かだったと筆者は考える。

市場は正直である。一人一人の投資家視点でいうなら、自分自身の損得がかかっているのだから、理念や理想ではなく実利で現実を見るのであり、そこに嘘はない。昨年の総裁選後の株価暴落で損失を被った人は多いだろう。

そして今年の総裁選においても同様の現象を予見して、大方の小泉氏優勢の報道に騙され、ネットの情報空間も比較的静かだったこともあり、事前に売りに走る人たちはまたしても損失を被ったことになる。かくいう筆者自身も、総裁選前に流石に空売りまではしないが、株系の現物資産を整理しておいたので、メディアに騙された一人である(笑)。

金と食い物の恨みは根深く残るから、今回の事象は今後の民意の動向に影響を及ぼすのは間違いないだろう。