2025/11/02
防災・危機管理ニュース
クマによる被害が多発する中、秋田県の要請を受け、陸上自衛隊が支援に向けた派遣場所選定などの準備を進めている。駆除には直接関与せず、箱わなの運搬などの後方支援を行う方針。自衛隊支援のモデルケースになれば、クマ被害が深刻化する他の自治体も要請を検討する可能性がある。
「現場の疲弊はピークを迎えており、県内のマンパワーでは対応できない」。10月28日に防衛省を訪れた秋田県の鈴木健太知事はクマ被害の危機的状況を訴えた。今年度、同県ではクマの目撃件数が8000件を超え、人的被害は死者3人を含め50人を超える。市街地でも場所を選ばず出没するようになり、市民が玄関のドアを開けるときでさえ警戒しなければならない「異常事態」を訴えた。
自衛隊は過去にも鳥獣被害対策に協力している。2010~14年度に北海道でエゾシカ、14~16年度に高知県でニホンジカ被害対策を支援。防衛省によると、北海道では雪上車による捕獲したエゾシカの輸送、高知では二ホンジカの生息調査などを行った。訓練の一環として行われ、生息調査は自衛隊ヘリコプターによる「偵察訓練」と位置付けられた。
根拠法令は自衛隊法100条の「土木工事等の受託」や防衛省設置法(教育訓練)で、今回も100条が適用される見通しだ。自治体の要請があり、訓練目的に適合すれば輸送業務も受託できる。
環境省によると、25年度のクマによる死者は北海道、秋田、岩手、宮城、長野の各道県で計12人(10月30日現在)と過去最多。防衛省幹部は新たに支援要請があれば「個別に判断するが、自衛隊の主任務は国防で、無制限には受けられない」としている。
ネット上では自衛隊に直接駆除を期待する声もあるが、陸自の小銃は猟銃より口径が小さい。陸上幕僚監部は「陸自が使用する小火器はクマの駆除を想定していないため、用途に適さない」としている。小泉進次郎防衛相は10月31日の記者会見で、「自衛隊は猟銃を使用した鳥獣駆除の訓練を実施しておらず、ノウハウも有していない。駆除を担うことは困難だ」と述べた。
ただ、隊員の輸送支援もクマの生息地に接近する危険がある。小泉防衛相は法的には武器の携行は排除されないが、一般的に100条に基づく土木工事などを実施する場合には想定し難いと説明。「携行する装備や安全対策も含めて県や猟友会の助言を受けながら具体的な対応策を調整している」と述べた。
〔写真説明〕秋田県公式サイトに掲載された、多発するクマ出没への注意喚起のポスター(秋田県公式サイトより)
〔写真説明〕鳥獣被害対策の訓練で、箱わなを車両から降ろす陸上自衛隊員=10月30日、秋田市の秋田駐屯地(陸自提供)
(ニュース提供元:時事通信社)


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