木原稔官房長官は15日、中国外務省が日本渡航を避けるよう自国民に呼び掛けたことについて「首脳間で確認した『戦略的互恵関係』の推進という大きな方向性と相いれない」と批判した。その上で「立場の違いがあるからこそ、日中間の重層的な意思疎通が重要だ」と指摘し、撤回するよう促した。新潟市で記者団に語った。

 中国外務省は呼び掛けの文面で、台湾有事は「存立危機事態になり得る」とした高市早苗首相の発言が「中国人の安全に重大なリスクをもたらしている」と主張している。木原氏は「こうした認識は日本側の認識と相いれない」と強調した。

 中国外務省の呼び掛けを巡っては、首相発言を撤回するよう圧力をかけるのが狙いとの見方が出ている。しかし、日本政府は「発言は従来の政府見解と変わらない」(外務省幹部)として撤回に応じない構えだ。政府関係者は「中国は試している。弱さを見せれば強く出てくる」と語った。

 一方、政府・与党からは両国関係悪化に歯止めがかからなくなると不安も漏れる。首相は10月末に中国の習近平国家主席と会談し、戦略的互恵関係推進を確認したばかりだが、日本政府関係者は農水産物に関する日中事務レベル協議の見通しが立たなくなったと証言する。閣僚経験者は「次は経済的な対抗措置だろう」と懸念を示した。 

 首相発言に対しては、中国の薛剣・駐大阪総領事がX(旧ツイッター)に「汚い首は斬ってやるしかない」などと投稿し、与野党から国外退去処分を求める声が上がる。ただ、日本側が強い措置を取れば応酬がエスカレートしかねないことから、冷静な対応が必要だとの指摘も出ている。(了)

(ニュース提供:時事通信 2025/11/15-17:05)

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