【バンコク時事】タイとカンボジアの国境紛争を巡り、両国首脳がトランプ米大統領の立ち会いの下、和平合意を締結してから26日で1カ月が経過した。トランプ氏は「歴史的な合意だ」と称賛したが、国境地帯の地雷で兵士が負傷したことを受け、タイ側が今月10日に合意の履行停止を表明。トランプ氏が再度仲介を試みているが、履行再開の見通しは立っていない。
 タイとカンボジアは7月、未画定の国境地帯で武力衝突し、少なくとも40人が死亡した。その後、米国や中国などの仲介で停戦で合意。10月26日にマレーシアの首都クアラルンプールで、国境地帯での重火器や地雷の撤去、カンボジア兵の捕虜の解放などを盛り込んだ和平合意を結んだが、2週間後に停止に追い込まれた。
 履行停止の理由となった地雷に関し、タイ側はカンボジアが設置したと主張したが、カンボジア側は設置を否定。今月12日には、カンボジア側がタイ軍の攻撃により民間人4人が死傷したと発表した。
 ロイター通信によると、トランプ氏は14日にタイ・カンボジア首脳とそれぞれ電話会談を行った後、「彼らは順調にやっている」と記者団に述べた。しかし、その後も両国が歩み寄る気配はなく、こう着した状態が続いている。
 トランプ政権は関税交渉を持ち出し、タイ側に和平合意の履行再開を迫った。タイ外務省は、米国から再開まで交渉を一時停止するという書簡を受け取ったと明かした。一方、タイ政府は交渉は継続しているとの見方を示している。
 米国との関税交渉について、カンボジアは決着している。タイも原則合意しているが、さらなる関税引き下げを求めて交渉中だ。タイメディアは「米国の姿勢は、長年の親密な同盟国であるタイに打撃を与えた」と批判的に報じている。 
〔写真説明〕トランプ米大統領(右)の立ち会いの下、和平合意の調印式に臨むタイのアヌティン首相(左)とカンボジアのフン・マネット首相=10月26日、クアラルンプール(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)