カナダ政府でサイバー対策を統括するサミ・コーリー・サイバーセキュリティー担当上級次官補が3日、東京都内で時事通信のインタビューに応じた。サイバー攻撃を受け、大規模なシステム障害が発生したアサヒグループホールディングスなどを念頭に、経済や社会に広く影響を及ぼす「対企業のサイバー攻撃の脅威は日々高まっている」と強調。阻止するには、実際の事案から得た教訓を共有するなど、官民一体の取り組みが必要だと訴えた。
 コーリー氏は、アサヒや通販大手アスクルが対象になった身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」による攻撃は、カナダのサイバー空間でも「最大の脅威」だと説明。人工知能(AI)の発展に伴い、攻撃手法は巧妙化しており、中小を含む全ての企業が「サイバー攻撃のリスクに備え、対策に投資することが重要だ」と呼び掛けた。
 その上で、政府には被害事案を検証し、攻撃の傾向や教訓を企業と共有することが求められていると指摘。「政府が行動可能な指針を示せば、企業は対策強化に取り組むことができる」と述べた。
 日本の警察庁によると、2025年上半期のランサムウエアの被害報告件数は116件で、22年下半期と並んで過去最多。被害に遭った企業の復旧費用も高額化している。
 コーリー氏は4日に都内で開催されたサイバーセキュリティーに関するフォーラム参加のため来日した。先進7カ国(G7)の今年の議長国を務めるカナダは、日本と共にIoT(モノのインターネット)機器へのサイバー攻撃対策強化などに取り組んでおり、今後さらに連携を強化したい考えだ。 
〔写真説明〕取材に応じるカナダ政府のサミ・コーリー・サイバーセキュリティー担当上級次官補=3日、東京都港区

(ニュース提供元:時事通信社)