在宅勤務の範囲と目的をはっきりさせているか?
第2回:テレワークのリスクを考える(1)

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/10/21
感染症時代のリスクマネジメント
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
前回は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、企業が感染予防の観点から、新しいルールや制度を受け入れつつあることを説明しました。今回からは「ニューノーマル(新たな常態)」と呼ばれるルールや制度を取り入れることで、新たに発生するリスクはないのか、またリスクがある場合は、それをどのように回避・低減していくべきかを考えます。
テレワークは、ICT(情報通信技術)を活用することで可能となる、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方ですが、そのスタイルによって次の3つに分類することができます[表1]。
経団連が2020年4月にテレワークの実施状況を調査したところ、回答企業の従業員の66%、約76万人がテレワークを行っていることが明らかになりました。
ただ、それらの企業は、必ずしも周到な準備を経て、テレワーク制度を導入したとは限りません。この4月に発出された緊急事態宣言以降、感染拡大防止の観点から在宅での勤務が可能となるテレワークを活用した企業も多いと考えられます。
ここでは、在宅勤務に焦点をあて、導入した際の課題を示すとともに、その課題解決の方法を検討します。
在宅勤務を取り入れることには、さまざまなメリットがあります。例えば、育児や介護を担う人が自宅で勤務できるという「働き方改革」や、勤務地にこだわらず優秀な人材を採用できるという「人材確保」、さらに事務所スペースを削減できるという「コストダウン」などのメリットが考えられ、すでにそれらを理由として導入していた企業も多くあります。
企業における今回の在宅勤務の導入は、いわゆる「3つの密」を避けるなど、感染の危険性を減らすという事業継続の意味合いが強いと考えられますが、導入すること自体が目的となっていないか確認しておく必要があります。
在宅勤務制度をどのような目的で取り入れるのかを明らかにして、それを従業員と共有してこそ効果が発揮されます。
感染症時代のリスクマネジメントの他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方