2015/08/11
防災・危機管理ニュース
大手検索エンジンのエンジニアなどITのプロフェッショナルが参加し、ITを活用して災害被災地の情報支援を行う一般社団法人「情報支援レスキュー隊(IT DART)」が8月8日、発足した。災害急性期から復興事業が始まるまでを活動期間とし、ITを活用することで、災害時に被災地のニーズを適切に把握、情報発信することで効果的な支援を行うことが狙い。

設立発起人の1人である及川卓也氏は、「東日本大震災では『情報の空白地帯』が発生するなど、支援が偏ったケースもあった」と東日本大震災当時を振り返る。IT DARTは災害時に自発的に活動できるITの専門家らによる有志を平時から組織し、トレーニングや連携体制を整えることで、緊急時における被災地のIT支援を円滑に行うことを目指す。
災害時には適切なIT支援が重要
設立会には49人の賛同者が参加。具体的な活動としては、①災害の初期段階で被災地に隊員を派遣、②自治体や避難所などの状況や支援ニーズを収集・把握、③情報を適切に発信することで、支援者や自治体、企業に繋げ、効果的な支援活動を促す。その手段として、メンバーの専門とするテクノロジーやプロジェクト管理、要件定義と言ったノウハウを生かすという。
設立総会に参加した岩手県陸前高田市役所の大和田智広氏は、「東日本大震災では、刻々と変わる避難所の正確な情報が把握できなかった。避難者の1人が『靴が足りない』とツイートしただけでテント1張り分の靴が届けられたこともあった」と、災害時の適切なIT支援の重要性について強調した。

設立会後には「自治体との連携」「活動に必要なITシステム」「被災地で効果的かつ安全に活動するための対策」「活動を開始するタイミングやそのための備え」の4つのテーマに分かれワークショップを開催。「通信が途切れていても、つながった時に重要なデータから送ることができる仕組みづくりが必要」「災害ごとにシナリオを作るべきでは」など、活発な提案が行われた。ホームページでは現在、会員、隊員や連携団体などを募集している。
□情報支援レスキュー隊(IT DART)ホームページ
http://itdart.org/
- keyword
- ITセキュリティ
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方