政府が19日に公表した首都直下地震の新たな被害想定は、電力・ガスなどの重要インフラに大きな被害が出ると見込んだ。中でも停電は首都圏の人口増を踏まえ、前回想定より3割程度増え、最大約1600万軒に及ぶと推計。電力・ガス業界は安定供給の実現へ、他地域からの融通拡大や設備の耐震化に重点を置き対策を講じている。
 新たな被害想定によると、東京電力管内では、被災直後に最大約5割が停電する可能性がある。東京湾沿岸に集中する火力発電所の運転停止が長期化すれば、電力の供給力が低下。東日本大震災の時のように計画停電が必要となる恐れがある。
 これに対し、東電は無電柱化の取り組みを引き続き進めるとともに、一つの送電線が被害を受けても別ルートで供給できる仕組みを整える。他地域から電力融通できる容量を増やす取り組みも安定供給には有効だ。周波数が異なる東西間で融通できる容量は、2027年度中に90万キロワット増強し、原発3基分の300万キロワットまで拡大する。
 電気事業連合会の林欣吾会長は19日の記者会見で、「被害が出たら他のエリアから応援できる体制を講じている」と述べた上で、「一日でも早い復旧に努めた動きをしている」と強調した。
 都市ガスは、被災直後には約140万戸で供給停止が見込まれる。業界では地震対策として、家庭などに送る低圧ガス導管について伸縮性のあるポリエチレン管などの採用を進める。耐震化率は直近で92.7%まで進むが、30年度末に95%の達成を目指す。日本ガス協会の内田高史会長は「できるだけ早く100%にしたい」と意気込む。 
〔写真説明〕東日本大震災後、東京電力への節電協力で電飾看板などが消灯された銀座4丁目交差点=2011年3月14日、東京都中央区

(ニュース提供元:時事通信社)