2012/09/25
セミナー・イベント
統合マネジメン トと ISO22301 をテーマにセミナー
インターリスク総研と三井住友海上火災保険 は 8 月 27 日、 「BCMS の新潮流を探る」をテーマに都内で セミナーを開催した。BCMS(事業 継続マネジメントシステム) 、QMS (品質マネジメントシステム) 、EMS (環境マネジメントシステム)など 複数のマネジメントシステムを統合し合理的に運営する「統合マネジメ ントシステム」や、今年5月に発行された ISO22301 の概要について説明があったほか、実際に事業継続 マネジメントに取り組む企業の取り組みが紹介された。

セミナーでは BSI グループジャ パン営業本部の鎌苅隆志東日本エリア営業部部長が ISO22301 と統合 マネジメントシステムの概念とその しくみについて講演。早い時期から 統合マネジメントシステムの利点を 理解して導入し、経営に生かしてい るというオー・エス・ピー(東京都) と、社長の強力なリーダーシップのもとに BCMS に熱心に取り組んで いる奥地建産(大阪府)が自社の例 を紹介した。またインターリスク総 研・コンサルティング第二部の田代 邦幸マネジャー上席コンサルタント が今後 BCMS やマネジメントシステムにいかに取り組んでいくべきな のかを問題提起も含めて講演した。
BSIグループジャパンの鎌苅氏は「今の経済状況の中では費用対効果が可視化できないと施策導入に繋がりにくい。BCMSを推進する担当者は経営層に提案する際には、不確実なことに対する取り組みであることをきちんと理解してもらうことが 重要だ」と話した。また BCMS に取り組む上での課題が「部門間でバラツキがある」「費用対効果の可視化が難しい」「形骸化しやすい」ことなどを指摘。部門間連携については、早い段階から経営層に参画してもらいリーダーシップによって解決することを勧めた。形骸化防止のためには、国際規格を活用して演習や試験を実施するのが効果的とし、認証機関の利用も方法の1つであると説明した。
オー・エス・ピーは、業務システムの構築から運用、保守、コンサルティングまでワンストップサービスを提供している。東京のほか沖縄、米国、インドに拠点を設 置し、時差を利用した 365日 24時間体制での運用を行っている。認証取得の実績 はISMS、ITSMS、EMS、BCMS(BS25999-2)で、BCMSはシステムインテグレーションサービスの「運用・保守」について適用している。経営企画室の増田孝志氏は、「各マネジメントシステムの統合以前は、規格ごとに 文書を整理していたため煩雑で記録 類も多く、効率的に活用できていな かったが、統合のガイドラインとして PAS99 を採用することで、 文書管理規定、教育管理規定などの文書体系を統合するなど改善ができた」と説明した。その結果、サービス責任者のマネジメントに対する理 解も進んだという。増田氏はマネジメントシステムを有効に運用するためには管理責任者が社内マネジメン トシステムの全体像を把握することが重要だと語った。
奥地建産は建築用鋼製下地材、太陽光発電用架台、住宅用基礎溶接鉄筋などの製造のほか積算システムサービス、地盤調査、鋼管杭工事を手がける。主力の三重工場
(三重県伊賀市) は、QMS、EMS、 BS25999 の各認証を取得しており、 同社の馬 渕義弘取締役・ 三重 PC長は、文書管理、記録管理、内部監査においてはほぼ共通で使用できているとした。教育訓練規定にお いては、QMS で取り組んでいた技能教育訓練(多能工化)を BCMS の観点からモニタリングするようにしたという。馬渕氏は「今後はシステムのブラッシュアップをし、全従 業員の意識向上により BCMS を企 業文化にすることを目指すとともに、毎朝唱和している“すぐ実行する” “60 点でもいいからまずやってみよう”の精神で取り組んでいきたい」と方針を述べた。同社は ISO 22301 については規格発行時から 移行作業を開始している。
インターリスク総研の田代氏は、「東日本大震災後の効果的なBCMS 構築・運用に向けて」をテーマに講演。まず、BCM への取り組み方について「地震や新型インフルエンザ などシナリオ中心の検討ではなく、 結果事象を中心とした検討プロセスを踏むことで、原因によらずに、その資源が使えなくなった場合の代替案が検討され想定外にも比較的対応しやすくなるのではないか、BCM はもともと結果事象中心のアプローチだったことも踏まえ、原点に回帰するべきではないか」と提案した。
田代氏はまた、「BCMS を構築し たからといってレジリエンスが高まるわけではなく、BCMS 構築当初 は、規格の要求事項をクリアするだ けかもしれないが、継続的な運用によって経営者の問題意識が高まり、 レジリエンスも組織的に高まってい く」と話した。




セミナー・イベントの他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2023/01/31
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月31日配信アーカイブ】
【1月31日配信で取り上げた話題】家庭での防災行動を高めるために
2023/01/31
-
-
1000人に聞いた防災の取り組みと行政への期待
リスク対策.comは、地域住民がどの程度防災に取り組んでいるのか、また防災の観点から行政に対してどのような要望を持っているのかなどを把握する目的でインターネットによるアンケート調査を実施した。その結果、2021年5月から避難勧告が廃止され避難指示に一本化されたことについては約5割しか理解していないことや、平時から国や地方自治体の防災のホームページなどがあまり活用されていない実態が明らかになった。調査は、2022年11月21日から22日にかけてインターネット上で行い、全国の20歳以上の成人男女1000人からの回答を得た。質問は、回答の質を高めるため「この質問は一番右の回答をお選びください」という条件項目を入れ、適切な回答をしなかったものを除き、計889人を有効回答として分析した。
2023/01/30
-
社内滞在時をイメージさせる実践的な訓練と備蓄
テクニカルセラミックスを開発・生産するクアーズテックは2012年、東京都の帰宅困難者対策条例を機に一斉帰宅抑制対策に乗り出しました。独自のプログラムを追加した実効性の高い訓練や被災時の心理にも配慮したきめ細かな備蓄が評価され、2021年には東京都のモデル企業に。同社の取り組みを紹介します。
2023/01/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月24日配信アーカイブ】
【1月24日配信で取り上げた話題】最強寒波への備え
2023/01/24
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年1月17日配信アーカイブ】
【1月17日配信で取り上げた話題】防災心理を学ぶゼミ生が制作した企業の防災マニュアル/コロナ発生から3年 企業の初動対応を振り返る
2023/01/24
-
BCPと助け合える関係が機能した災害復旧活動
2019年の台風19号でグループ含め3工場が壊滅的被害を受けたカイシン工業は、経営トップが「全力復旧」の方針を発表すると各工場が即座に活動を開始。取引先や協力会社の支援を受けて設備の交換を迷いなく進めるとともに、代替生産によって早期に出荷を再開しました。同社のBCPと助け合える関係づくりを紹介します。
2023/01/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方