食料供給困難事態対策法
食料供給困難事態対策法の概要

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2025/03/28
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
食料供給困難事態対策法という法律をご存じでしょうか。同法は、令和6年6月14日に成立し、同年同月21日に公布されました。そして、いよいよ本年4月1日から施行されます。
「食料供給困難事態」と聞くと、少しおどろおどろしく感じられ、警戒や敬遠をしてしまいそうになりますが、同法の目的規定(1条)を分析的に読めば、下表のような背景、手段、目的等に整理できるように思われます。
上の表からおわかりいただけるように、食料供給困難事態対策法は、私たちの生活や生存に密接に関連した法律であるといえますし、「特定食料」や「特定資材」の生産、販売、輸入等に携わっている事業者の方にとっては、事業にも密接に関連した法律であるといえます。そこで、今回は、同法の概要についてご説明したいと思います。
まず、食料供給困難事態対策法(以下、単に「法」と表記)において重要な文言として、「特定食料」(2条1号)と「特定資材」(2条2号)とがあります。これらについては、法に定義規定が置かれた上で、施行令1・2条で具体的に定められています。これらにつき、適宜、簡略化するなどしてまとめると、下表のようになります。
また、法においては、食料供給困難に関し、「兆候」と「事態」とで、食料供給に関する状況を大きく2段階に分けて定義しており、これを引用・整理すると、下表になります。
さらに、後述する対策本部の設置期間において、「食料供給困難事態の発生を未然に防止し、又は食料供給困難事態を解消するため」に、国が法及び後述する基本方針に基づいて実施する措置のことを「食料供給困難事態対策」としています(2条5号)。
法は、政府に対し、「食料供給困難事態対策を総合的かつ一体的に実施するため、食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針」(以下「基本方針」)を定めることを求めています(3条1項)。
基本方針は、㋐食料供給困難兆候が発生する前の段階、㋑食料供給困難兆候が発生した段階、㋒食料供給困難事態が発生した段階、という3段階に区分して定めるものとされ(3条3項)、①食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方向、②食料供給困難兆候又は食料供給困難事態に該当するかどうかの基準に関する事項、③国が実施する次に掲げる措置(イ~ニ)に関する事項、④食料供給困難事態対策を実施するための体制に関する事項、⑤前各号に掲げるもののほか、食料供給困難事態対策の実施に関し必要な事項を定めるものとされています(3条2項)。
基本方針の案については、既に策定され、本年2月4日~3月5日にかけて、パブリックコメントの手続に付されていました。パブリックコメントで寄せられた意見等への対応が行われた上で、基本方針が閣議決定され、公表されることになります。
「食料供給困難事態対策」の定義からもおわかりいただけるように、今後、同法の運用においては、法とともに、この基本方針が極めて重要になってくるといえますので、公表された場合には、法・施行令と合わせて、そちらもしっかりと参照して、実務において対応する必要があります。
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