建物再建にあたっては、仮住まいの確保に釘・材木の提供やがれき整理への奨励金等の自力復興を誘導した。また、耐震防火建築技術講習会の開催にもかかわらず、被災住宅の再建では原則許可不要の取扱や簡単な届け出など、再建手続きの簡素化は迅速な恒久住宅再建をもたらしたが、一方では耐震性に乏しい旧態依然の建物再建となった。

福井市の復興過程について行政担当者の回想から、GHQの進駐に際し戦前の都市計画資料を処分した中で、密かに個人が保管した資料が戦災復興計画の立案を迅速にし、戦災復興の土地区画整理の仮換地指定が震災の2日前に完了したなど、復興の事前準備の必要性と、熊谷市長の強いリーダーシップの重要性が指摘された。

<福井地震と豪雨災害>
堤防沈下という福井地震の河川被害は、震災1カ月後の九頭竜川豪雨水害と、56年後の2004年足羽川豪雨災害を引き起こす原因の一つである。前者は、福井地震からの道路・橋梁の復旧を遅らせ、農村・農業に大きな被害をもたらし、地震と水害の複合災害となった。さらに山間地での地震動が斜面崩壊等の被害を拡大した可能性もある。後者は、沈下堤防の盛土による修復部分が削り取られ、そこから大規模破堤となった水害であった。前者の浸水地域は、現在は全域的に市街化し、再度同じ状況を来すと飛躍的な大被害となろう。複合災害への備えの重要性をつたえている。

<福井地震から学ぶ教訓>
 福井地震から学ぶ今日への災害教訓として、以下の10点をあげている。
(1)地震はどこにでも発生する、と考えなければならない。
(2)地震の予知はまだ出来ず、地震は不意打ちに発生するが、過去の地震災害に学び、その教訓を国民が共有しておくことが重要である。
(3)地震探査や微地形などを通して、地域や自分の“災害環境”を知ることが、防災対策の実践を促す。
(4)建造物の耐震改修の推進は、地震防災の基本である。
(5)木造密集市街地が存在する日本の都市では、地震火災の防御は重要な課題である。
(6)復興対策も事前に準備しておく「事前復興」の取り組みが重要である。
(7)「自助復興」への支援対策が、被災者の復興モチベーションを作り出す。
(8)復興にあたっては強いリーダーシップが重要である。
(9)地震と台風などの複合災害に対する取り組みとして、「対策の一体化」が必要である。
(10)断層の存在や地形・地盤など、地域の潜在的脆弱性(ハザード)に配慮した都市整備が、災害に強い都市づくりには不可欠である。
今日にも訴ええる重要な教訓である。

以下に、防災専門図書館に企画展の展示資料を紹介する。

写真を拡大 防災専門図書館提供
写真を拡大 防災専門図書館提供

謝辞:防災専門図書館の皆様のご協力に心から感謝します。

参考文献:「報告書」(内閣府、1948 福井地震)、防災専門図書館文献、筑波大学附属図書館文献。

(つづく)