2016/05/11
おかしくないか? 日本の防災対策
編集部注:この記事は2014年12月にお亡くなりになりました齋藤氏が執筆された「リスク対策.com」本誌2014年3月25日号(Vol.42)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月11日)
1 銀座での死亡者は数名?
8年前の東京都総合防災部在職中に、ある方から「東京都中央区銀座の地震による死亡者は数名しかいなく、しかも、多くの中間人口(約60万人)は含まれていないのは、おかしい」とのご指摘を受け、早速、当時の「首都直下地震による東京の被害想定(平成18年5月公表)」を調べてみました。最も被害が大きい東京湾北部地震(冬の18時・風速○メートル)での死者は、中央区全体で約150人で、うち銀座地区の夜間人口で単純に割ると数名でありました。
そこで、改めて「被害想定」の全文を読んでみると、いくつかの仮説を積み重ねて算定したことが明らかになりました。
(注)これ以降の文章や数値は、平成24年4月公表の「首都直下地震等による東京の被害想定」による。アンダーラインは筆者記入。
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/taisaku/1000902/1000401.html
2 仮説を積み重ねて算定した被害想定
東京都防災ホームページの被害想定から、「首都直下地震等による東京の被害想定」をみると、次の前提条件のもとに算出されたものであることが分かります。
また、人的被害については、①建物全壊(ゆれ・液状化)による死傷者数、②急傾斜地崩壊による死傷者数、③火災被害による死傷者数、④津波浸水による死者数、⑤屋内収容物の転倒・落下等による負傷者数、⑥ブロック塀等の転倒による死傷者数、⑦落下物等による死傷者数の7項目が算定されています。
こうした前提のもとで、最も被害が最大となる東京湾北部地震(M7.3 冬、夕18時、風速8m/秒)で、都全体の死者が9641人となり、千代田区(夜間人口約4万7000人、中間人口約85万人)で273人、中央区(夜間人口約12万人、中間人口約65万人)で151人、港区(夜間人口約20万人、中間人口約91万人)で200人です。
さらに、原因別でみると次のとおりで、新幹線の被害は含まれていません。
被害想定の第3部には「被害想定手法」があり、その中に「被害想定成果の活用に向けた留意点」が記されています。
被害想定とは、このように限られた少数の事例をもとに、様々な仮定をおいて推計され、その結果として出された数値であり、メディアではこれらの前提条件や留意事項について言及されておらず、死者数などの数値だけが独り歩きしており、そのまま信用すべきではないと考えています。
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