また図2は要素ごとの順位である。要素名の右側のカッコ内は2017版からの順位の変動を表している。

図2.組織のレジリエンスに影響を与える16の要素(出典: BSI / Organizational Resilience Index Report 2018)

筆者が特に注目したのは、まず重要性の認識で前回トップだった「レピュテーションに関するリスク」が5位まで下がったことである。ただし他のページに掲載されている別のデータで確認したところ、レピュテーションに対する重要性の認識が下がったわけではなく、他の要素(例えば「財務管理」、「リーダーシップ」、「ビジョンと目的」など)がそれ以上に伸びたことによる相対的な下降である。またパフォーマンスの観点では「レピュテーションに関するリスク」が前回より5ランク上がって4位となっており、こういった点からもレピュテーションに対する関心が依然として高いことがうかがえる。

他には「ガバナンスと説明責任」がパフォーマンスと重要性との両方で順位が上がっていることと、(図2だけでは読み取れないが)「調整・整合(Allignment)」について重要性の認識が大きく伸びている割にパフォーマンスが上がっていない(順位も大幅に下がっている)点が注目に値すると思われる。本報告書ではこの変化を「今年の調査結果は、レピュテーションに対する関心は以前として高い一方で、組織の関心は資源管理のような内部的なリスクから、新しい規制制度や革新的な新技術など外部の変化に移ってきていることを示唆している」と指摘している(注3)。

なお、図2などを見てお気づきの方もおられるかもしれないが、一部の要素は前回報告書から名称が少し変わっているので、BSI内部でもOrganizational Resilience Indexそのものに関する議論や検討がまだまだ続いているのではないかと推察される。恐らく本報告書を読むだけでは分からないような変更も少なからず行われているであろう。このようなベンチマーキング自体が全く新しい試みであるから、今後数年程度は多少の試行錯誤が続く可能性もあると思われるが、今後もこのような調査が継続的に行われることを期待したい。

■ 報告書本文の入手先(PDF28ページ/約1.2MB)
https://www.bsigroup.com/en-GB/our-services/Organizational-Resilience/Organizational-Resilience-Index/

注1)『英国規格協会が提案する「組織レジリエンス」の指標 - BSI Organizational Resilience Index Report 2017』(2017/11/24公開) http://www.risktaisaku.com/articles/-/4219

注2) Horizon Scanとは、中長期的に将来起こりえる変化や事象を、系統的な調査によって探し出そうとする手法である。BCMの専門家や実務者による非営利団体である BCI では、2011年から、主に BCI 会員を対象として「Horizon Scan Survey」というアンケート調査を毎年実施しており、その結果を報告書として公開している。2017年版の報告書「Horizon Scan 2017」は本連載でも紹介させていただいた。 http://www.risktaisaku.com/articles/-/2435

注3)カギカッコ内はBSIのCEOであるHowerd Kerr氏による序文(Foreword)の一部を筆者が和訳したものである。原文は次の通り。「This year’s findings suggest that, while remaining focused upon reputation, organizations are shifting focus from internal risks such as resource management, to external changes such as new regulatory regimes and innovative new technologies.」

(了)