2021年9月から11月にかけて、府中、調布、世田谷、新宿等でサルの目撃情報が相次ぎ、警察官が捕獲のため追いかけるということがありました。数年前には、足立区や埼玉でイノシシが出没するということもありました。

首都圏でイノシシやサルが人々の生活圏に登場すると、それはもう大騒ぎです。が、こちら佐賀県において彼らの登場は1匹、2匹ではありません。親子で、群れで現れて、多くの畑を荒らしていきます。カルガモもそう。都心では「カルガモ一家の引っ越し」等ほのぼのとしたニュースでよく登場しますが、こちらでは有明の海苔を食べまくる厄介者の扱いです。

鳥獣被害防止のための駆除

唐津地域鳥獣被害防止計画によると、平成30年度、唐津市でイノシシによる被害額は、稲2858.9万円、飼料作物676.6万円など総額2500万円を超えています。サル被害の額は、ミカンなどの果樹416万円、芋など野菜53万円にもなります。隣の玄海町でも被害が報告されていて、唐津市と玄海町ではタッグを組み、唐津地域鳥獣被害防止計画を作成しています。

民家近くにも出没していることを鑑みて、ここ数年のイノシシの年間捕獲計画数は6000頭です。サルは個体数が明らかに増え、群れ移動している状況から捕獲100頭を目標として設定されています。捕獲方法は、銃器および箱罠やくくり罠が基本です。

イノシシやアライグマは果物やトウモロコシなどの美味しくなる時期をわかっていて「明日収穫予定だったのに、やられた」という声をよく聞きます。収穫まで天候と戦いながら育てた野菜や果物をその直前に奪われる、大事に養殖してきた海苔も「まもなく」という直前にカモに食い散らかされる、こうした被害を防ぐために銃器や罠での駆除が必要となります。

最近は若者や女性が狩猟を始め「ハンターガール」として活躍する様子が取り上げられていますが、それはまだ一部のエリアです。地方の農村部では猟友会メンバーの高齢化が進み、有害駆除員が年々減少しています。特に、散弾銃などの銃器を使って駆除を行う人員は少なくなっており、私の住む唐津でも同じ状況です。

私はそこそこの年齢ですが、猟友会に入るとまだまだ若手、ヒヨッコ扱い。猟友会の方が「猟友会ではなく、老友会だよ」と冗談で言うほど、高齢化が進んでいます。

また、地域に必要な猟友会のメンバー内でも銃を返納する方が増えています。高齢で銃の扱いに自信がなくなったとか、家族に反対されてとか、理由はさまざまです。そのため、後進が育つ前に経験豊富な猟友会メンバーがいなくなってしまうという状況です。

害獣駆除の箱罠(写真:写真AC)

猟友会メンバーすなわち駆除の人員が減るとどうなるか、農家の方々は自分たちで狩猟免許を取得して箱罠を仕掛け、農作業の合間に見回りをしなければなりません。仕掛けた箱罠にイノシシが入っていたら「やったー、捕まえた!」で終わりではなく、仕留めて、時に100キロを超えているイノシシを罠から取り出し、埋めるまでやり切らなければなりません。

これがもし北海道なら、クマも出没します。箱罠での捕獲が難しい時は、銃を持つ駆除員が必要になります。しかし、猟友会メンバーは減り、銃を持つ駆除員も減っている現状があり、いてほしい時に必要な人材がいないという状況、今後はますます起こりえるといえるでしょう。

危ないから銃はダメ、イノシシだってクマだって駆除するなんてかわいそうというだけでは暮らしていけない現実が地方にはあります。