■ 日系中小企業の弱点

まずはこれまでの経験から、中国進出した中小企業が直面している課題をまとめてみます。

1) 大手企業と違い体力がないことから、運営を現地に任せっきりになっていることが多く、会計処理などが正しく行われているかどうかの判断がつかない。

2) 海外に行ける人材が慢性的に不足している。しかし、日本からの駐在員は3~4年周期で代わることが多いため、適材適所とはいえない責任者を立てることを余儀なくされている。
中国人を責任者に立てる企業もあるが、日本の商習慣などとの違いからうまくいかないケースが多い。

3) 言語の違いと商習慣の違いに翻弄されてしまう。また、国家体制の違いから日本の常識は通じず、かつ現地従業員の意図するところ、希望や要望などについてのコミュニケーションが不足している。

4) 現地の情報が本社に十分に伝わっていない。現地法人からだけの情報では正しい経営判断ができない。現地の日系企業とのコミュニティしか情報源を持たないということがほとんど。

5) 現地スタッフと日本人駐在員の給与格差が大きく、経済成長を続ける中国では現地スタッフにとっては日系企業に勤めるというメリットがない。結果、採算の合わない事業になっている。

6) 中国の「性悪説」がどのように日常に発現するかが理解できず、本来ならば抑止しておくべきことができない。中途半端な体制下、比較的勤務の長い現地スタッフに野放図にやられてしまっている。

7) 駐在員の私生活やプライベートな面には無頓着なためか、自己管理のできない駐在員が問題を起こすケースが多く、情報の漏えい、経費の無駄遣いなど経営リスクとなり得る事象が把握できていない。

8)中国政府、中国市場、中国経済の変化のスピードはすさまじく、数十年も変化の乏しい日本で培われた習慣から容易に脱出できないという「形骸化されたシステム」を中国でも引きずっている。相変わらずの相見積もり制など。

9) 外部専門家、コンサルタントへの投資を軽視する傾向が強い。
結果、日本人駐在員が本来の仕事(生産、営業)に集中できず、日々の雑多な仕事に追われ疲弊している。

10)日本から来る実効性のない監査チームの弊害。高い経費を使い現地の視察に来るが、現地のスタッフからすれば迷惑に感じることが多い。現地の事情に疎い監査は全くの無意味。

11) 共産主義国家、社会主義体制でありながら、市場経済という複雑な状況が飲み込めていない。一種の矛盾の中で繰り広げられる経済活動への対処ができてない。

12) 世界の覇権国家を目指す中国は、これまでの欧米式のスタンダードから脱し、中国式スタンダードを定着させようとしている。しかし、日本は長らく欧米式に慣らされているため、規格、方式、管理手法に至るまで戸惑いを隠せない状況。いつも変化に追われてしまっており、受け身の態勢から抜け出せない。

13) 日本式の系列や下請け体制に慣らされているため、良い技術、世界的技術を持っていても、それをうまく売り込めない。また、「中国に出ると技術が盗まれるとか真似されるから……」というステレオタイプの考えが強く、ビジネスとして展開できない。

以上。スペースの関係上、ここで筆を置きますが、まだまだ課題、弱点として挙げることのできるポイントは数多く存在します。次回から一つずつ実例を挙げながら、原因と処方せんをご紹介していきます。

(了)