2019/06/04
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
図1は地図上で日本をクリックした際の表示である。総合評価は27位となっており、右側の円グラフを見ると、「サプライチェーン」のスコアが高いのに比べて「リスクの内容」のスコアが低いのが分かる。扇型の部分をクリックすると内訳が表示されるようになるが、「サプライチェーン」の中で最も高く評価されたのは「インフラの品質」で5位であった。一方で「リスクの内容」の内訳を見ると、「自然ハザードへの暴露(exposure to natural hazard)」がスコア0で 104位となっており、これが足を引っ張っているようである(注3)。

一方で総合的な評価が低かったのは最も低い順に130位がエチオピア、129位がベネズエラ、128位がハイチとなっている。ハイチは2016年ハリケーン「マシュー」の被害からの復興が、燃料不足などの影響で進まない現状が指摘されている。またベネズエラは自然災害や汚職、石油への依存度の高さなどに加えて、ハイパーインフレーションの問題が背景として挙げられている。
なお「FM Global Resilience Index」では各国のスコアを比較する機能がある。図2は上位3カ国とシンガポール、日本の2015~19年までの5年間の変化を比較した例である。より上位の国が濃い色で表示されているので、各国間の優劣がおおまかに掴みやすくなっている。図では「経済面」の内訳を広げて表示しており、この状態だとスイスが最も高評価に見えるが、「リスクの内容」や「サプライチェーン」という部分を見ると他国より若干劣る部分があるため、総合的には僅差ながら3位となっている。

2018年版を紹介した際にも指摘させていただいた通り、サイト上には図と数字の情報しか表示されないため、国ごとの状況を大まかに比較することぐらいしかできないが、損害保険会社の情報収集・分析力のデモンストレーションという意味合いが大きいと思われ、情報の見せ方が非常に工夫されていてる。まずこのサイトで大まかな状況や全体感を把握した上で、より詳細な情報収集に進むというような使い方をするには有用なのではないだろうか。
■ 報告書本文の入手先:
https://www.fmglobal.com/research-and-resources/tools-and-resources/resilienceindex
(調査結果はWebサイト上で閲覧できるが、調査分析方法の詳細と分析結果のサマリーがPDFファイルになっており、上のURLにアクセスしてページ右側の「Methodology / Annual Report」という部分をクリックするとダウンロードできる。)
注1) 2018年7月31日掲載『第53回:各国のビジネス環境におけるリスクの総合的ランキング/2018 FM Global Resilience Index』
https://www.risktaisaku.com/articles/-/8448
注2) このようなデータは順位だけを見て一喜一憂するようなものではないが、他国に対する自国のポジションを知っておくことにも、それなりに意味はあるかと思う。
注3) これは「The percentage of a country’s area devoted to economic activities that is exposed to at least one natural hazard: earthquake, wind or flood.」(経済活動が営まれている地域のうち、地震や強風、洪水といった自然ハザードのうち少なくとも1つに晒されている面積の割合)と定義されているので、日本は全土がこれに該当すると思われるので、このスコアが低くなるのはやむを得ないであろう。
(了)
- keyword
- 世界のレジリエンス調査研究ナナメ読み
- ビジネスリスク
- レジリエンス
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
-
-
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方