図1は地図上で日本をクリックした際の表示である。総合評価は27位となっており、右側の円グラフを見ると、「サプライチェーン」のスコアが高いのに比べて「リスクの内容」のスコアが低いのが分かる。扇型の部分をクリックすると内訳が表示されるようになるが、「サプライチェーン」の中で最も高く評価されたのは「インフラの品質」で5位であった。一方で「リスクの内容」の内訳を見ると、「自然ハザードへの暴露(exposure to natural hazard)」がスコア0で 104位となっており、これが足を引っ張っているようである(注3)。

写真を拡大 図1.FM Global Resilience Index で日本を選択した際の表示内容(出展:2019 FM Global Resilience Index)

一方で総合的な評価が低かったのは最も低い順に130位がエチオピア、129位がベネズエラ、128位がハイチとなっている。ハイチは2016年ハリケーン「マシュー」の被害からの復興が、燃料不足などの影響で進まない現状が指摘されている。またベネズエラは自然災害や汚職、石油への依存度の高さなどに加えて、ハイパーインフレーションの問題が背景として挙げられている。

なお「FM Global Resilience Index」では各国のスコアを比較する機能がある。図2は上位3カ国とシンガポール、日本の2015~19年までの5年間の変化を比較した例である。より上位の国が濃い色で表示されているので、各国間の優劣がおおまかに掴みやすくなっている。図では「経済面」の内訳を広げて表示しており、この状態だとスイスが最も高評価に見えるが、「リスクの内容」や「サプライチェーン」という部分を見ると他国より若干劣る部分があるため、総合的には僅差ながら3位となっている。

写真を拡大 図2.上位3カ国とシンガポール、日本との間の比較(出展:2019 FM Global Resilience Index)

2018年版を紹介した際にも指摘させていただいた通り、サイト上には図と数字の情報しか表示されないため、国ごとの状況を大まかに比較することぐらいしかできないが、損害保険会社の情報収集・分析力のデモンストレーションという意味合いが大きいと思われ、情報の見せ方が非常に工夫されていてる。まずこのサイトで大まかな状況や全体感を把握した上で、より詳細な情報収集に進むというような使い方をするには有用なのではないだろうか。

■ 報告書本文の入手先:
https://www.fmglobal.com/research-and-resources/tools-and-resources/resilienceindex
(調査結果はWebサイト上で閲覧できるが、調査分析方法の詳細と分析結果のサマリーがPDFファイルになっており、上のURLにアクセスしてページ右側の「Methodology / Annual Report」という部分をクリックするとダウンロードできる。)

注1) 2018年7月31日掲載『第53回:各国のビジネス環境におけるリスクの総合的ランキング/2018 FM Global Resilience Index』
https://www.risktaisaku.com/articles/-/8448

注2) このようなデータは順位だけを見て一喜一憂するようなものではないが、他国に対する自国のポジションを知っておくことにも、それなりに意味はあるかと思う。

注3) これは「The percentage of a country’s area devoted to economic activities that is exposed to at least one natural hazard: earthquake, wind or flood.」(経済活動が営まれている地域のうち、地震や強風、洪水といった自然ハザードのうち少なくとも1つに晒されている面積の割合)と定義されているので、日本は全土がこれに該当すると思われるので、このスコアが低くなるのはやむを得ないであろう。

(了)