2019/06/28
危機管理の神髄
答えがない、あるのは質問だけだ
9月2日、昼、ワシントンDC、ホワイトハウス、イーストルームにて
記者会見が始まり、大統領が演壇に上がると人がいっぱいの部屋の押し殺した静けさがカメラの動きやシャッター音で破られた。
「私は、本土安全保障省オジャミ長官および他の大統領補佐官から、ニューヨーク市の状況について最新報告を受け取ったばかりです。私からあなた方に言えることは、私たちの思いと祈りが、この重大な悲劇によって被災したニューヨーク市の人たちや他の人たちに届いていることです。われわれのまだ知らないことがあまりに多いですが、これは今分かっていることです」
「先週の木曜日午後4時ごろ、米国東海岸沖の領海に侵入した潜水艦からミサイルが発射されました」
「このミサイルはダイナマイト1万トンの以上の爆発力を持つ核装置を搭載していました。皆さんご存じの通り、ニューヨーク市のタイムズスクエア近くに着弾しました。搭載の核装置が直ちに爆発し、マンハッタンのミッドタウンのほとんどが破壊されました」
「われわれは、まだこの言語を絶する悪魔である犯人を知りません。しかし、この犯行結果は、壊滅的です。数千、おそらくは数十万人が死亡し、それ以上の人たちが負傷し、緊急医療処置が必要です。しかしながら、その対応活動は阻まれています。全ての道路、橋、トンネルが閉鎖されて、この都市は切り離されてしまっています」
「われわれは、米国上最悪の災害に対処しています。そのため、閣僚を招集しました。ニューヨーク市と他の地方の人々は、有効な対策を打つために、連邦政府は州政府と地元自治体が共同して働くことを期待しています。
ですから、ニューヨーク市とニューヨーク州双方の公選された幹部への連絡を取ろうと試みています」
「米国合衆国の沿岸警備隊は、ニューヨーク沖で捜索救助活動を実施しています。国防省は、この地域に重要な部隊と装備を展開する準備をしています。これらには、捜索救助活動を遂行するためにUSS バターン号と、捜索救助の8部隊、イオウジマ水陸両用即応隊、医療処置を支援する病院船USNSコンフォートも含まれています。FEMAと陸軍工兵隊は被害状況を評価し次の対処方針を決めるために、昼夜休みなく働いています」
会場の雑音と話し声が大きくなる。大統領は危機について語っているが、彼の言葉は響かない。この国には、回答が求められる質問がいくつもある。大統領は推し進める。
「われわれの優先順位の第二は、必要な食料、水、避難場所、医療品を確保して、生存者や献身的な人々ー失礼、避難した人々―の命を支えることです。
FEMAは、最も被害のひどい地域近くに支援品や設備を運んでいます」
現時点で、いら立ったCNBC記者のジェームズ・エヴァートンが叫ぶ。「大統領、次の攻撃はあるのでしょうか?」
大統領は、事前に用意されたペーパーを続けて読み上げる。「運輸省は、トラック400台以上を提供して、積み荷1000台分、食事5000万食、水1300万ℓ、防水シート1万枚、氷300万ポンド(1360トン)、発電器140台……」
氷のような些細なことが、会場の雰囲気を破る。記者たちが叫び始めたのだ。
ABCニュースの記者キャサリン・ホルダーが大声で、「ニューヨークから送られてくる映像は、とても恐ろしい。大統領、何千人もの人が路上で死にかけている。あなたはどのようにして、彼らを救助するのですか?」
大統領はうんざりとした表情を見せながら答えようとした。「そうですね。50以上の災害医療支援チームを国中から派遣している。そうだね、ワッサーマン博士?」大統領は後ろを振り向いて彼を見た。保健福祉省長官はしぶしぶうなずいた。大統領は続けながら、「被災した地域の人たちを助けるために」
ホルダー記者は続けて、「50チームですか、大統領。被災した全ての人たちにこれだけ? 彼らは今現地に入っているのですか?」
「いいえ、まだ現地にいません。しかし、今から72時間以内に到着し始めると思います。到着すれば、放射線対策のトレーニングを受け、安全確保のため適切な装備を着用します」
ホルダー記者の「遅すぎる」という声が他の人に聞こえた。どよめきが続く。大統領が両手を上げて静粛を求める。静かになると、一つの質問が響いた。
「今何をすべきか知りたい人に、何と言いますか? 誰が避難すべきですか? 誰が屋内にとどまるべきですか?」
「そうですね。避難所にとどまるべき人もいるでしょう。また、避難すべき人もいるでしょう。それはそれぞれの人の状況次第です。地元当局の指示を聞くべきです」と大統領が答える。
この記者は続けて、「しかし、人々は何も聞いていません。あなたが今連絡が取れないといったばかりの人たちに、どのようにして、地元市役所職員の話に聞くように伝えることができるのですか」
大統領はしばし中断して、答え始める、しかし、誰かの質問で遮られた。「室内のとどまるように言われても、食料も水もないのに、人々はどうすればいいのでしょうか」
大統領は下を向いた。「われわれは、米国赤十字と連絡を取っています。彼らは、ボランティアを全国から動員しています。しかし、彼らは、このような状況で活動することは訓練されていないと言っています」
もう一人の記者が質問した。「ここワシントンはどうですか? われわれは危機から脱しているのですか? われわれのほとんどは、家族と連絡が取れません」部屋の後ろから誰かが叫んだ。「いつになったら、この状況をコントロールできるのか」
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