さらに状況悪化へ

10月初め、ワシントンDC

何週か過ぎ、さらに状況が悪化してカオスに陥っていくのを、世界が見守っている。

被災しなかった州の政治家たちは、災害の影響からの隔離を強化するように要求し始める。テキサス州知事は連邦離脱を要求する。1年以内にテキサスは、前州知事を大統領とする独立国となるであろう。大統領はこの行動を非難しているが、ワシントンからの何の直接的な行動もない。

大統領に対する弾劾案が起案されている。しかし、多くの連邦議員は危機的な時において、無駄な矛先違いの議論だと反対している。大統領は、国を結束させるためにスピーチで訴えた。しかしながら、ほとんど効果がない。彼は現場訪問の度重なる要請を無視し、ボルチモアより北へはあえて行こうせず、離れて安全にいることを好んだ。

同時に、ほとんど後からの思い付きでパコレアとの戦争を始める決断をする。彼は、人民海軍司令部に対して戦術核攻撃を命令する。この爆発でパコレアの指導者を殺害することはなかったが、ありがたいことに、さらなる核兵器の報復はない。

この戦争は、通常戦争へと移行していく。大統領は、フロリダ州の米国中央軍指令本部から戦争を指揮することにほとんどの時間を費やす。彼は軍隊と働くことを好んだ。なぜなら、FEMAと異なり、彼らは多くの質問を持っているがいくつかの回答を用意しているからだ。

ホワイトハウスが、FEMAのインシデント・コミュニケーションを引き継ぎ、光沢のあるニュースレターの体裁で、写真入り、目玉記事、「前線からのニュース」と題した読者の興味をそそる記事などを盛り込んだ状況報告書を毎日発行し始めた。

ニュースレターは、マンハッタンのミッドタウンの立入禁止地区からの英雄と犠牲の物語を伝える。最初は、ニューヨーク消防隊やニューヨーク警察チーム、例えば18スクワッド隊、そして、州境が閉鎖される前に入ってきた近隣州からの物語である。

人道的な救援チームは世界中から救いの手を差し伸べ始める。国連本部は破壊されたが、国連は国連人道問題調整事務所(OCHA)を通じて、さまざまなチームを同時に送り込み始め、よりまとまりのある対応になっていく。このOCHAの取り組みは、救援能力があり放射線を恐れない他国のチーム(とくにウクライナのチェルノブイリと福島の現場を経験した)に、被災地区において人命救助に当たることを可能にする。

シエラ・レオーネ赤十字・安全・尊厳ある埋葬チームが関係したある話が、大きな希望を与えてくれる。これらのチームは、2014年の西アフリカのエボラ伝染病の時に、3000体の死者の埋葬を準備して実行した。ポラリス攻撃の後、彼らは爆心地に入り、数十人の生存者を救助したその勇敢さを示して、この大災害の最初の偉大な英雄となった。

数週間から数カ月が過ぎ、一つのことが明らかになった。強大な米国、世界で唯一の超大国が屈したのである。

(続く)

翻訳:岡部紳一
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300