2012/03/25
事例から学ぶ
東日本大震災では、発災直後からの通信規制に加え、通信ビルや中継ケーブルの被災により広範囲で電話が つながらない状況が続いた。NTT 東日本では、即座に災害対策本部を立ち上げ、復旧にあたった。同社の 災害対策本部の運営方法を取材した。

NTT 東日本では、非常態勢区分を3段階に分け、それに応じた災害対策本部を設置することにしてい る。
第1態勢は、今回の東日本大震災のような、国 に緊急対策本部が設置される「著しく激甚な災害」 。 第2態勢は、新潟中越地震や中越沖地震のような 「局 地的な激甚災害」 。防災大臣が本部長になるような非常時災害対策本部が設置された時がこれに相当す る。第3態勢は、それ以外の地震災害や、豪雨・豪 雪などで通信への被害が見込まれる場合。
さらに、この3区分の下に、災害対策本部は設置 されないが、情報連絡室を立ち上げ、情報を収集し ながら、いつでも本部が設置できる準備段階として警戒態勢というものがある(図1) 。
態勢の区分によって災害対策本部のトップが変わる。第1態勢では社長が災害対策本部の本部長に、 第2態勢では副社長クラスが、 そして第3態勢では、 サービス運営部長が本部長になる。そして、警戒態 勢では災害対策室長がトップに立つ。
同社災害対策室長の中島康弘氏によると、第1態 勢ほどの広域な激甚災害になると、通信以外でもい ろいろな会社の重要業務に影響が出ることが考えら れるため、BCP(事業継続計画)の観点から、社長 が本部長に就くことにしているのだという。 ただし、 社長や副社長が本部長になった場合でも、技術的な 判断と対応指揮はサービス運営部長があたる。つま り経営判断と技術的な判断とを、しっかりと分けて 対応できるようにしているのだ。
もちろん、すぐに被害状況や規模が明らかになら ない場合もあるため、 まず情報連絡室を立ち上げて、 その後、情報収集しながら第3態勢から第2態勢、 第1態勢へとエスカレーションしていく場合もある という。東日本大震災でも、発災直後はサービス運 営部長を本部長とした第3態勢の災害対策本部を設 置し、国の緊急災害対策本部が設置されると同時に 社長を本部長とした第1態勢に変更した。
ちなみに、今後、東海地震の警戒宣言が発令され た場合には第2態勢となり、実際に発生した段階で 第1態勢になることが決められているという。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方