2019/07/25
企業をむしばむリスクとその対策
□対策:あらかじめ発生を想定し準備しておく
繰り返しになりますが、第三者からの犯罪行為によるリスクは、あらかじめ発生することを想定し、その対応を事前に準備しておくことが重要です。事件が起きた際、担当者や経営トップが「そのようなことは起こるはずがない」などと考え、事実関係の把握を怠り無責任な発言をすることや、警察沙汰を恐れるあまり情報開示や対応のタイミングを誤ると、発生した事件そのものではなく、企業の対応自体が非難の的になってしまいます。そうなると長年かけて築いた信頼も一瞬のうちに崩壊すると同時に、昨今ではその不名誉なレッテルがインターネット、SNS上に長期間残り続け、長きにわたって企業イメージを損なうことにつながってしまいます。
具体的には、現場の担当者から経営トップへの情報伝達方法や伝達基準といった「エスカレーションルート」の決定と、社内での情報共有手段を決めておく必要があります。
また、原因の究明や現状把握などを誰が指令し、誰がやるのか、といった役割分担も決めておかなければなりません。同時に、その担当者不在の際の代行者も決定しておくべきです。
さらに、危機に対応するための組織としての「対応方針」も決定も必要になりますが、その際には、どんな二次的被害が考えられるのか?を想定して決定する必要があります。どのような二次的被害が起き得るかを想定するためには、過去に起きた他社事例の情報収集は欠かせません。そして「これがうちの会社で起こったら…」という自社への当てはめを行っておく必要もあります。
危機対応に当たっての組織としての「公式見解」も忘れないようにしましょう。公式見解はそれを外部のステークホルダー(マスコミを含む)に公表するときは「プレスリリース」になるものですが、同時に全社員にも通達しておきます。事件発生直後から、社内では正誤の情報が錯綜(さくそう)することが予想されます。また、マスコミの対応窓口を社内で一元化したとしても、事件の当事者となった際には、社員一人一人が会社の代表として世間から見られてしまうことも多いため、社員への正確な情報提供は欠かせないものとなります。社員への説明はできる限りマスコミ発表に先立ち最優先で行いましょう。社員へはプレスリリースの内容の他、以下も通達します。
① マスコミ対応窓口の連絡先を伝え、取材を受けた際にはそちらに問い合わせてほしい旨を通達する
② マスコミ以外の外部の人(家族や友人など)からの質問に対して、何をどこまで話してよいかについて
公式見解を社員に通達することで、●社内の混乱、社員の動揺を抑える、●あらぬ誤報を生じさせない、●会社の危機管理の姿勢を疑われない、といった効果があります。
今回のリスク:主に経営層・管理職が注意すべきハザードリスク
(了)
企業をむしばむリスクとその対策の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方