夜の街に安易に経費で行くと、とんでもないことに

■ 優しい言葉とは裏腹なしたたかな戦略

こんな中、新たに赴任してきた日本人B総経理は、当然のごとくA女史の手厚いサポートを受け、到着早々からスムーズに事が運ぶことに驚き、日本で聞いていたA女史の素晴らしさを手放しで評価するようになっていったのです。前任者ばかりではなく、日本で中国を担当している役員からも彼女のことは知らされていましたし、初めての中国駐在という不安も彼女の活躍により全く感じないほどの出発となったのです。

そんな中A女史より、B総経理に以下のようなアドバイスがあったのです。

「B総経理、毎日お仕事大変でしょうし、夕方以降はお客さまの接待などで気苦労も多いことでしょう。そのようなときに気休めとしてバーやカラオケなどに行かれてストレス発散をされたりすることも理解できます。しかし、経費もかかることでしょうから、そんなときのお支払い時には必ず発票(領収書)をもらってきてください。私が上手に経費として申請しますので、ご心配いりませんから」。

これを聞いたB総経理、ただただ彼女の気遣いに驚くと同時に、感謝したのでした。その後は、当然のようにアフターファイブの領収書は彼女を通して経費として申請されていくのでした。

さて、話はここでは終わりません。実はこれにより既にB総経理はA女史に弱点を握られてしまっていたのです。

時は過ぎ、段々と中国や社内事情が見えてきたB総経理、ある時A女史の悪行に気付いたのです。どうも、彼女が全ての総務部において金銭に関わることに一枚絡んでいるらしいことに。

B総経理は、まずは本人の意見を聞かねばとA女史を呼びつけ詰問します。しかし、彼女はいつもの笑顔と真面目な面持ちで「総経理にそういう風に見えていたら、それは私の配慮が足りませんでした。私は決してそんなことはしておりません」と答えるのです。納得がいかないB総経理は、別のスタッフにも事情を聞きましたが、明確な言質は確保できませんでした。

そんな矢先、本社よりB総経理に連絡が入ります。「君、どうも毎晩毎晩カラオケに入り浸っているらしいじゃないか! スタッフから内部通報があったよ」と。そして、それが引き金となり、B総経理の弁解もむなしく本社への帰任となってしまったのです。

読者の方はもうお分かりと思いますが、内部通報者はA女史でした。彼女は本社の役員とも仲が良く、直接メールを送って集めに集めた領収書の証拠を示しながら、B総経理が仕事に集中せず夜はお酒ばかり飲んで困ってますという報告をしてしまったのです。評判の良い会社思いのA女史の通報です。皆がそれを信じてしまうのも当然のことでしょう。まんまと彼女は、自分の悪行がバレるどころかさらに本社の評判を上げたのでした。

これは、筆者がB総経理本人より聞いた事件のあらましです。

皆さん、いかがでしょうか? これほどにしたたかな「お局様」が存在することもお忘れなきように!

(了)