メトリックスの確認はSafetyから

議事は今週のMetrics(メトリックス= KPI:Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の確認へと移っていく。

「それでは今週のMetricsの確認を始めます。まずSafetyから。今週のRIR(=Recordable Incident Rate)ですがA倉庫とB倉庫でそれぞれ1件の事故が発生しています。それぞれの説明をお願いします。」

「はい、それではA倉庫から報告します。先週火曜日16時34分頃、倉庫内3Fの西側通路で体調不良で座り込んでいる作業員の方が発見されました。管轄のマネージャーに連絡があり、警備隊による車いすの搬送を行い休憩室で容態の確認を行い、かなり症状がひどいため救急車による搬送へと切り替えました。医師の診察では、軽い熱中症ということで、点滴が施され、回復後、作業員の方は帰宅されました。今回の事故の原因は、南側通路だったことから明り取りの窓からの西日が差し込んでおり、その西日が直接当たる場所で作業していたことが原因と思われます。実際に翌日同じ天気での計測で32度を記録していました。対策としては作業位置の変更および西側の明り取りの窓の遮蔽を行い、温度上昇と体温上昇を防いでまいります。また追加対策として、2時間おきの水分補給の休憩を設けると共に、マネージャーによる巡回の強化をしてまいります」

「ありがとうございます。皆さんから何かご質問等はありませんか?」

「明り取りの窓を遮蔽するということですが、それによって庫内の照度の変化はどうなりますか? それによる副次的な問題は発生しませんか?」

「はい、実際に遮蔽後、照度の確認を行いましたが、基準はクリアーしており、作業場の問題はありません」

「ありがとうございます」

上記のように会議の中で安全は他の指標、品質、納期、コストよりも上位に位置し、最も時間をかけて話がされるパートになります。特に原因解析と対策は徹底して行われます。それに対しての対策も暫定対策と恒久対策に分けて計画され即時実行することが決まりとなっています。また同様の環境や設備、作業方法などがないか他の倉庫にも同時に共有され、必要な対策が取られていきます。このようにネットワークとして事故のリスクを常に最小化する努力が行われ、それぞれの倉庫のリーダーシップチームは、より安全な職場環境を維持することを第一として日々の業務を行っているのです。

生産性の高い現場は安全な現場でのみ達成される

安全第一という標語は時としてお飾りになり、実際にはコスト優先、納期優先という環境が見受けられることも多々ありますが、アマゾンではそこは決して曲げず、常に安全優先でマネージメントが行われています。それはアマゾンに安全の文化を持ち込んだJeff Wilkeの思いだけでなく、真の品質が高く生産性の高い現場は安全な現場でのみ達成されるという信念を、それぞれのリーダーシップチームが常に意識していることだと思います。

Amazon JapanのオペレーションのトップであるJeff Hayashida(ジェフ・ハヤシダ)氏は「Safety is a sign of respect. (安全は他者に対する敬意の表れである)」という言葉を常に使っています。常に他者を敬い、敬意を表すことこそが安全を守っていく理由なのであるということでしょうか。

(了)