(3)今後の訓練に向けての提案

福祉避難所開設のため養生テープを段差に貼る

・大災害時には、在校する大勢の児童・生徒に加え、帰宅困難者、一般避難者、要配慮者などが殺到する。福祉避難所の開設においては、発災直後の混乱をどう収めるかが最大の懸念材料なので、混乱状況を想定しての訓練を検討してはどうだろうか。
・「発災後3日目に大田区から福祉避難所の確認連絡」が入る想定となっている。しかし、熊本地震の益城町の障がい者支援施設では、町からの開設要請は入らず、避難者約100人が駐車場に押し寄せ、1週間以上も食事を提供し続けた例がある。そこで、発災後、区から連絡がない状況下で、帰宅困難者、一般避難者、要配慮者などが押し寄せてきたら、どのように対処するかを決めておくことが重要である。
・「震度6弱で校舎に大きな被害無し」と想定されている。しかし、首都直下地震の被害想定では、都区部はおおむね震度6強以上で、何らかの被害が発生してもおかしくない。その意味で、被害で使えない建物や部屋を想定して、建物点検、施設利用の見直し協議などの活動を入れてはどうだろうか。
・以上のような、発災直後の混乱、建物・室内などの被害などを想定すると、あちこちに想定外の事案(要員・情報・空間・物資などの対応資源の不足)が発生する。このとき、その情報受発信・分析・方針・指示出しなどにおける本部の統率力や現場の判断・対応力が重要になる。こうした本部・現場の情報訓練を訓練メニューに盛り込んではどうだろうか。
・大田区の福祉担当部局や地域のサポート隊、社協などからのボランティア、協力いただけそうな企業などとも連携し、より実践的な訓練を目指してはどうか。
(4)福祉避難所開設の準備
「福祉避難所利用計画書」を作成してはどうか。例えば、次のような項目である。
・避難者用の受付場所・滞在場所、帰宅支援ステーション利用者用の受付場所・待機場所
・相談室、医療救護室、けが人の休養場所
・感染症患者のスペース(必要に応じて)
・汚物集積所
・給水場所、物資配給場所、炊き出し場所、救援物資搬入場所
・一般避難者向けスペース(椅子席など)
・トイレ掃除、ごみの分別・回収のルール
・特設公衆電話の使用時間とルール
・ペットの飼育のルール
・食料配給時のルール
・相談室の場所と開設時間

なお、実際の福祉避難所の開設・運営では、細かい課題が数多く発生します。このとき、ルールに固執することなく、その時々の状況に応じて柔軟に対応することが大切。矢口特別支援学校の福祉避難所開設訓練は、多くの教職員、地域住民、行政が参加した模範となる訓練であり、来年度の取り組みが今から楽しみです。

(了)