2016/10/30
世界から求められるEHS 環境、健康・衛生、安全を一体的に推進!
縦と横の連携で推進
グループ全体のEHSの推進体制は、 CSR経営担当役員が防災EHS管理統括者となり、その直下に各事業会社、機能会社、子会社が組織化されている。
推進事務局は、BS(SCREENビジネスサポートソリューションズ)の環境安全健康部が担い、全体の計画のとりまとめや進捗管理などを行う。1人の担当者がEHS すべての知識を身に付けることは難しいため、環境安全健康部の中でも「環境」「労働安全」「防災BCM」担当と役割を分担し、さらに子会社のジュランが各拠点に駐在し、EHS推進活動にあたっている。BS環境安全健康部11人に加え、ジュランの担当者37人の総勢48人体制で全社のEHSサポートにあたる。
ただし、いくら現場にEHS担当を配属したからといっても「縦のラインだけではEHSをグループ全体で一体的に推進していくことは難しい」と西原氏は語る。そこで、横串として、「防災EHS委員会」を設け、その下にグループ全社の実務担当者でつくる分科会を配置して技術的課題などをサポートしている。縦のライン管理と足並みがそろうよう、防災EHS委員会のトップは、防災EHS管理統括者であるCSR経営担当役員が兼務し、副委員長も副防災EHS管理統括者であるCTOと総務・人事の担当役員が兼ねる。委員は、ラインとグループ会社から選出された防災EHS管理責任者(各社の役員)で構成する。

このため、年間計画も各社単位のものと、委員会活動に基づく分科会単位のものの両方を策定している。四半期に1回、防災EHS管理統括者であるCSR経営担当役員の出席のもと管理責任者を集めた情報共有会議を開くとともに、イントラネット上のプラットフォームに各種計画や実施報告書を掲載し、それぞれの進捗などを管理している。
平時と紐づいた有事対応
一方、環境事故や、労働事故、巨大災害などが発生した際には、この推進体制と紐づいた対応がただちにとられるようになっている。
例えば、環境事故や労働事故など工場や事業所で起きた事故に関しては、各社の管理責任者をトップに、該当事案に関係する防災EHSメンバーが中心に対応にあたる。基本的にはよほど大きな事故でない限りは、各社に対応を委ね、グループ全体での対応は行わない(広報などはホールディングスで対応)。
一方、大規模災害時には、現場だけでの対応が困難なことが想定されるため、まず現地(拠点)で対策本部が立ち上がり、同時に本社(ホールディングス)でも対策本部が立ち上がる。現場は事業所長がトップとなり、自衛消防と連携を取りながら、消火活動など自衛防災、被害状況の確認、安否確認、救援・救護、二次
災害防止、生活復旧支援などの対応を進める。
本社は防災EHS管理統括者が対策本部長のもと、人事、施設・設備、広報、IT、資金、緊急物資、ビジネス担当がメンバーとなり、現地への人的・物的の支援にあたる。EHS推進事務局であるBS環境安全健康部は対策本部事務局として全体調整にあたる。
また、現地対策本部とは別に、被災した当該事業所を持つグループ会社でも復旧対策本部を立ち上げ、主要事業を継続するためのBCPに基づいて、優先順位の検討、代替生産の検討、生産の再開、復旧などの支援を行う。複数のグループ会社が被災するなどの広域災害の場合は、BCPに関しても本部が全体調整にあたることにしている。
世界から求められるEHS 環境、健康・衛生、安全を一体的に推進!の他の記事
- 【インタビュー】今なぜEHSなのか。欧米企業とは「大きな差」
- 【講演録】グローバル企業に求められるコンプライアンス~環境・労働安全衛生関連法規制の順守~
- 【先進事例】組織体制をシンプルに 環境を柱に一体的に推進
- 【先進事例】海外顧客の要求に応える 統合マネジメントでEHSを推進
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方