パート2: 差し迫った攻撃から生き延びる

1.    すぐにシェルターを探してください。

 

地政学的な警告サインとは別に、核攻撃が差し迫った時の最初の警告は、アラームや警告シグナルで通知されることが考えられます。もし、そのような警告が無い場合、爆発で初めて攻撃を知ることになるでしょう。

核兵器の爆発から発せられた閃光は、爆心地から何十マイルも離れた場所でも確認できます。爆発地点付近(爆心地)では、爆発から生き延びられる確率は、かなり強靭なシェルター内にいない限り、皆無に等しいでしょう。

爆心地から数マイル離れた場所にいる場合は、熱風が到達するまでに10-15秒、衝撃波が到達するまでに20-30秒かかります。どのような状況であっても、直接火の玉を見てはいけません。晴れた日は、かなり広い範囲で閃光により一時的に目が見えなくなることがあります。しかし、爆弾の大きさ、爆発点の高さ、そして爆発時の天気によって、実際の被害半径は、かなり違ってきます。

・もし、シェルターが見つからない場合は、近くの窪地を探し、そこに入って、できるだけ肌が露出しない状態で伏せてください。このような場所が見当たらない場合は、できるだけ早く穴を掘ってください。爆心地から8キロ(5マイル)の位置でも、3度の火傷を負う事になります。また、32キロ(20マイル)の地点でも、熱線により、体の皮膚が焦げてしまうほどです。爆風は、最大で960キロ/時(600マイル/時)となり、建物や外にいる人をすべてなぎ倒してしまうほどの威力です。

・前述のような対応ができない場合は、屋内に逃げ込みます。この場合、必ず、かなりの爆風や熱線にも耐えうる建物でなければいけません。少なくとも、建物は、放射線から身を守ってくれます。建物の構造や爆心地からの距離により、これらの選択肢も変わってきます。また、窓からは離れてください。できれば、窓がない部屋のほうが安全です。たとえ建物自体が大きな損傷を受けなくても、爆発により、かなり離れた場所でも窓を吹き飛ばします。例えば、ロシアのバヤゼムリャでおこなわれた核実験では(異常なほど大きなサイズのものでしたが)、フィンランドやスウェーデンでも窓が吹き飛ばされたことが知られています。

・スイスやフィンランドに住んでいる場合は、自宅に核シェルターがあるかどうか確認してください。もし、無い場合は、村/町/地区の核シェルターの場所を探し、そこに行く道順を把握しておいてください。

・ここで覚えておいてほしいのは、スイスでは、あちこちに核シェルターがあるということです。スイスで警報が鳴れば、警報が聞こえない人(耳が聞こえない等)にも知らせ、国営ラジオサービス(RSR、DRSおよび/またはRTSI)を聞いて情報を得る事になっています。

・可燃物から離れてください。ナイロンなど、オイル・ベースの素材は、熱により発火します。

2.    放射能に晒されることで、多くの人が死亡します。

 

・初期放射線は、爆発の際に放出される放射能で、短寿命、短距離しか飛びません。現代の核兵器は、威力がかなり大きいので、爆風/熱線が届く距離が遠くなります。よって、爆風/熱線が届かず、初期放射線の影響だけで死に至る人の数は少ないと言われています。

・残留放射能は、放射性降下物とも呼ばれています。爆発が地表で生じるか、火球が地面に接すると、大量の放射性降下物が生じます。塵や埃が大気中に巻き上げられ、雨となって降下し、危険量の放射能がもたらされます。汚染された黒い煤は、雨に混じって降ってくることがあり、これを黒い雨とも呼びます。この雨は、非常に危険で、かなり熱いこともあります。降下物が触れたものは、すべて汚染されてしまいます。

爆風と初期放射線から生き延びることができた場合(放射線症には、潜伏期がありますが、少なくともこの時点では生き延びることができた場合)、黒い煤から身を守れる場所を探してください。

3.    放射粒子のタイプを知っておきましょう。

 

ここで一旦、異なる3つの放射粒子のタイプについて説明します。

・アルファ粒子: 放射粒子の中でも一番弱く、攻撃時に、事実上、脅威にはならないものです。アルファ粒子は、大気中に吸収される前に、空中で数インチ飛ぶと無くなってしまいます。この粒子は、体の表面であれば、さほど危険性はないのですが、体内に摂取したり、吸入したりすると致命的です。普通の服で、アルファ粒子から身を守ることができます。

・ベータ粒子: アルファ粒子よりもスピードが速く、より遠くまで透過します。この粒子は、最大で10メートル(10ヤード)飛び、その後、大気中に吸収されます。ベータ粒子は、長時間晒されていなければ、致命的ではありません。長時間晒されると、痛みのある日焼けのような、ベータ火傷を引き起こします。また、長い時間、目にあたると、とても危険です。そして、体内に摂取したり、吸入するのは危険です。服を着ていれば、ベータ火傷は防ぐことはできます。

・ガンマ線: ガンマ線は、最も危険な粒子です。空中を1マイル近く飛ぶことができ、どんなものでも透過します。このことから、ガンマ放射能は、体の外からでも、内蔵器官に深刻なダメージを与えます。かなりの防御が必要となる粒子です。

・放射能を防ぐシェルターのPF値は、シェルター内にいる人が、戸外にいる時の被曝量と比較して、何倍少なく被曝するかを示しています。例えば、RPF300は、戸外にいるより、シェルター内であれば、被曝量を300分の1に抑えることができるという意味です。

・ガンマ線に晒されないようにしましょう。5分以上、ガンマ線に当たらないようにしてください。田舎にいる場合は、洞窟や倒れた木を探し、中に潜りこんでください。その他、単に穴を掘って、そこに横たわり、あなたの周りに土を盛ってください。

4.    自分のシェルターの内側から、壁の周りに土や使えそうな物を盛って、防護力をアップさせてください。

 

溝の中にいる場合は、屋根を作ってください。ただし、屋根になる材料が近くに有る時だけ、屋根を作ってください。できるだけ、放射能に晒されることがないようにしてください。

パラシュートやテントなどに使われているキャンバス生地を使えば、降下してくる塵からあなたを守ってくれますが、ガンマ線は防ぐことはできません。根本的な物理レベルで、完全にすべての放射能から身を守ることは不可能なのです。

しかし、許容レベル内に留めることはできます。放射線透過率を1/1000に低減できる素材の必要量を決める際に、以下の数値を参考にしてください。

・鉄: 21cm (0.7feet)
・岩: 70-100cm (2-3ft)
・コンクリート: 66cm (2.2ft)
・木: 2.6m(8.8ft)
・土: 1m (3.3ft)
・氷: 2m (6.6ft)
・雪: 6 (20-22ft)

5.    200時間(8-9日)以上、シェルター内にいてください。

 

どのようなことがあっても、核攻撃後48時間はシェルターから出ないでください。

・核爆発による「核分裂生成物」を避けるためです。この核分裂生成物の中で、一番危険なのは、放射性ヨードです。幸いにも、この放射性ヨードの半減期(自然に減衰し安全な同位体になるまでの期間)は比較的短く8日です。ただし、8-9日を過ぎても、多くの放射性ヨードは残っているので、外に出るのは制限してください。放射性ヨードの量が初期量の0.1%になるまでには90日かかるとされています。

・核分裂による、その他の主な生成物としては、セシウムとストロンチウムがあります。それぞれの半減期は、30年、28年で、生物に吸収されやすい特性を持っており、何十年も食品を危険にさらしてしまいます。また、風で何千マイルも飛ばされるので、離れた場所なら安全だと思うのは間違いです。

6.    自分の生活必需品を計画的に消費してください。

 

当たり前ではありますが、生き延びるためには、備蓄したものは計画的に消費してください。食料が尽きてしまうと、最終的には、放射能に晒されることにはなります(食料と水がある特殊なシェルターでない場合)。

・加工食品は、食べても大丈夫です。但し、その容器に穴があいておらず、比較的ダメージを受けていなければ、大丈夫です。

・動物は食べることはできますが、火を使って注意深く皮部分を取り除きましょう。また、肝臓や腎臓は廃棄します。骨に近い部分の肉は食べないようにしましょう。放射能は骨髄に残留するからです。

・「ホットゾーン」の加工食品は、食べても構いませんが、地下茎が食べられるもの(人参やじゃがいも)をお勧めします。植物が食用になるかどうかテストしてください(植物が食用になるかどうかのテスト方法を参照)。

・野ざらしになっている水源は、放射性降下物が含まれているかもしれないので、危険です。湧水、フタがしてある井戸などの地下水源が良いでしょう。小川や湖の水を使うのは、最後の手段にしてください。

土手から1フットの位置に穴を掘ると、フィルターのようになって水がしみ出てきます。この水は、濁っていたり、泥が入っていると思いますが、沈殿するまで待ち、上澄み部分を沸騰させて、滅菌します。建物の中の水は、通常安全です。

もし、水がない場合は(おそらく、水が無いケースのほうが多いとは思いますが)、水道パイプの中の水を使います。屋内で一番高い位置にある蛇口を開け、一番低い場所にある蛇口を開けて、エアを入れます。すると、建物内のパイプに残っていた水が出てきます。

7.    衣類はすべて着用してください(帽子、手袋、ゴーグル、袖口が締まったシャツなど)

 

ベータ火傷(次項参考)を少しでも防ぐため、特に外に出る時は、衣類はすべて着用してください。服は常に振るったり、水で洗うことで、汚染物質を除去してください。また、露出した肌部分に、汚染物質がついたままになっていると、火傷をひきおこします。

8.    放射能による火傷や、熱による火傷の治療

 

・軽い火傷: ベータ火傷ともいいます(ベータ粒子ではなく、他の粒子によるやけどの可能性もあります)。痛みが和らぐまで、ベータ火傷の部分を冷たい水に浸します(通常5分)。

・水ぶくれができたり、焼け焦げたり、皮膚が破れはじめるようならば、冷たい水で洗い、汚染物質を除去します。化膿しないように、滅菌した圧定布で傷口を覆ってください。決して、水ぶくれを破らないでください。

・水ぶくれができたり、焼け焦げたり、皮膚が破れていなければ、傷口をカバーしないでください。体の大部分に火傷をおっていても(日焼けのように)、覆わないでください。覆う代わりに、火傷の部分を水で洗い、入手できそうならばワセリンまたはベーキングパウダー溶液でカバーしてください。(汚染されていない)濡れた土で覆ってもOKです。

・重い火傷: 熱による火傷ともいいます。電離粒子というよりは熱風によるものが多いですが、電離粒子で重い火傷を負う事もあります。このタイプの火傷は、命にかかわります。脱水、ショック、肺のダメージ、感染症などが要因になって死亡することがあります。

・更に汚染されないように火傷を保護してください。

・火傷の部位に服が残っている場合は、その服をゆっくりと切り、火傷部分から取り除いてください。火傷に貼りついてしまった服を無理やり剥がさないでください。火傷にかぶっている服を引っ張らないでください。火傷に軟膏は塗らないでください。もしくは、救急隊に電話したほうが賢明です。

・火傷を水だけで優しく洗います。クリームや軟膏は塗らないでください。

・火傷専用でない通常の滅菌包帯は使わないでください。はりつかないタイプの火傷用包帯(その他の医療品も含めて)は、おそらく入手しにくい状態だと思います。そこで、代用品として、ラップ(サランラップ)を使ってください。ラップは、滅菌されていますし、火傷にはりつくこともなく、入手しやすいはずです。

・ショック症状を防いでください。ショック症状は、生命維持に必要な組織や内臓に血液がうまく流れなくなる状態です。もし、治療できなければ、死に至ります。ショック症状には、かなりの量の失血、深い火傷、傷や血を見たことによる反応があります。

ショック症状のサインとして、落ち着きが無くなり、喉がかわき、青ざめ、心拍数が早くなることが挙げられます。また、肌が冷たくなったり、濡れている場合でも、汗をかき続けます。状態が悪化すると、息が早くなり、目がうつろになります。対処法としては、正しい呼吸ができるような体位にし、胸をマッサージして正常な心拍数と呼吸を保ちます。

締めつけている服は緩めて、その人を安心させてください。自信を持って、しっかりと、そして優しく対応してあげてください。

9.    放射能疾患(放射線症候群)を発症した人を、躊躇せず助けてあげてください。

 

この疾患は、感染しません。あくまでも、その人が受けた放射能の量によって症状・状態が決まります。以下の表は、その要約です。

10.    放射線単位を理解しておきましょう。

 

(GY(グレイ)は、電離放射線の吸収線量を図るSI単位。1Gy=100 rad. Sv(シーベルト)は、線量のSI単位で、1Sv=100REM。簡易化のため、1Gyは通常1Svと同等とみなされます。)

・0.05Gy以下: 目に見えるような症状はでません。

・0.05-0.5Gy: 赤血球数が一時的に減少します。

・0.5-1Gy: 免疫細胞の生産が減少し、感染症、吐き気、頭痛になりやすく、嘔吐もよくみられます。この放射線量は、治療を受けなくても、通常生き延びる事ができます。

・1.5-3Gy:この線量を被曝すると、35%が30日以内に死亡します(LD35/30)。吐き気、嘔吐、全身の脱毛がみられます。

・3-4Gy: 深刻な放射能中毒で、50%が30日後には死亡します(LD50/30)。その他の症状は、2-3Svの線量と同等で、潜伏期には口からの出血、皮下および腎臓内で出血(4Svで50%の確率)が見られます。

・4-6Gy: 急性放射能中毒で、60%が30日後には死亡します(LD60/30)。4.5Svで死亡率は60%に上がり、6Svで90%になります(集中治療が施されない場合)。症状は、被曝後1-2時間後から始まり、2日後まで続きます。その後、7-14日の潜伏期があり、3-4Svの被爆時と同等の症状が激しさを増しながら叙々に現れ始めます。女性の不妊症は、この段階では発症することが多いです。回復には数カ月から1年を要します。主な死因(被曝から2-12週間後が多い)は、感染症や内臓出血です。

・6-10Gy: 急性放射能中毒で、14日後には100%が死亡します(LD100/14)。集中医療ケアによって、生き延びることもできます。骨髄がほぼ完全に破壊されるので、骨髄移植が必要です。胃腸組織が、深刻なダメージを受けます。被曝から15-30分後から症状が出始め、2日間続きます。その後、5-10日間の潜伏期後、感染症または内臓出血により死亡します。回復には数年かかり、回復しない事も多くあります。Devair Alves Ferreira氏は、ゴイアニアの事故で約7.0Svの線量に晒されましたが、生き延びました。これは、その理由の一つとして、おそらく分割照射であったせいだと考えられています。

・12-20REM: 死亡率は100%で、このレベルになると、症状はすぐに現れます。胃腸組織は完全に破壊されます。口、皮下、腎臓から出血します。倦怠感と全身症状により、命を失ってきます。症状は、前述と同様ですが、深刻度を増します。回復は不可能です。

・20REM以上: 同様の症状が、激しさを増して、すぐに現れます。そして、数日間は調子も良くなり「歩く幽霊」と呼ばれる段階になります。しかし、突然、胃腸の細胞が破壊され、失血および脱水症状が起こります。精神錯乱状態が始まると、死期が近づいています。脳が呼吸や血液の循環などの体の機能をコントロールできなくなると、死に至ります。医療ケアで、治療はできません。ただ、楽にしてあげる事だけです。

・残念ながら、このような人はすぐに死んでしまうと覚悟する必要があります。厳しいようですが、食料や物資を放射能疾患で死んでいく人に与えて無駄にすべきではありません。健康な人に、物資を提供すべきです。放射能疾患は、子供やお年寄り、病気の人によく見られます。

11.    EMP(電磁パルス)から、大切な電子装置をガードしてください。

 

非常に高い高度で核兵器が爆発すると、非常に強い電磁パルスが発せられ、電子/電気機器が壊れることがあります。少なくとも、電気プラグやアンテナから機器の全てのプラグを抜いておいてください。

ラジオや懐中電灯を密閉できる金属の入れ物(ファラデー箱)に入れておくとEMPを防げることがあります。また、EMPから防護しないといけない物品は、箱と接触させないでください。金属のシールドが、防護すべき物品を完全に覆うようにし、地面に接していると効果的です。

・ 防護すべき物品は、導電性の外枠から絶縁しておいてください。これは、シールドに打ち寄せるEMPフィールドが、半導体の回路基板に電圧を誘導することがあるからです。もし、その場所に爆風がこないような遠い場所であれば、機器を綿や新聞で包み、その上から金属化した「スペース・ブランケット(2米ドル程の価格)」で、しっかりと覆っておくとファラデー・シールドのようになり、効果的です。
・別の方法としては、段ボールを銅またはアルミホイルで覆います。防護すべき機器をその中に入れて、機器のプラグを地面にさしておきます。

12.    その後の攻撃に備えてください。

 

おそらく、核攻撃は一度では終わらないと思われます。敵国からの次の攻撃や侵略に備えておきましょう。

・生き延びるためにシェルターの一部をどうしても使う必要がある場合を除き、シェルターは完全な状態に保って置いてください。また、余分な浄水と食料も確保しておいてください。

 

・もし、敵国が再度攻撃してくる場合は、その国の別の地域が攻撃されることが考えられます。シェルターが使えない場合などは洞窟に住んでください。