台風4日前からの動き

行政も判断はギリギリだったと思われます。広域避難勧告は、社会的な影響がとても大きいものです。これも結果から言える事ですが、広域避難先となっている、埼玉県や千葉県の方が、江戸川区よりも被害が出ていますので、避難先も必ずしも安全とはいえません。他方、「住民とすれば、広域避難勧告は出してくれたほうが避難しやすい」という声もありました。出されないからといって安全というわけではありませんから。

このように、行政からの広域避難勧告が出されていない状態での避難や決断は、勧告が出された時よりも、実は難しい判断となります。結果はすべて各自や各組織に委ねられてしまうからです。だからといって、行政も自然をすべて把握できるわけではありませんから、いつも完璧に避難勧告等が出せるわけではありません。結局のところ、どんなに判断が難しくても、各自や各組織が決断しなければいけないグレーゾーンというべき状況がありうることがわかります。

そんな難しい状況の中、STEPえどがわは、どのように動いたのでしょうか? STEPえどがわは、江戸川みんなの防災プロジェクトに立ち上げから主体的に参加していました。この江戸川みんなの防災プロジェクト(以下みんな)は、地元の防災専門家など個人有志の方とえどがわボランティアセンターが一緒になり「災害時、誰ひとり取り残されない地域のために、気軽に防災について話そう、いろいろやってみよう」という考えのもと、学習や交流の機会を図っているグループです。

つまり、STEPえどがわは、地域とのつながりを生かして災害時に対応する方法を模索していました。

当時のグループLINEを再現しますね。(一部改変しています。「みんな」は、みんなの防災プロジェチームメンバー)

台風4日前から情報収集が始まっています。台風3日前、この「みんな」は、10月末のイベントの打ち合わせの会議があり、会議前にはこのような会話が交わされます。

STEPえどがわには、江戸川区のハザードマップを受けて、事前に決定していた防災プランがありました。同理事の市川裕美さんは、2007年能登半島地震の際に、防災プランの必要性を感じたそうです。当時、自宅近くの利用者宅に介助に入っていた市川さん。もし東京で地震が起こったら、日曜日で事務所は閉まっているけど、利用者を見捨てて帰れない。また、他の利用者さんの安否も気になるのに、交代の人が来れるのか、何も決まっていないことに不安を覚えたそうです。そこで、2008年に、災害対応マニュアルの基本を策定しました。2018年に「みんな」のメンバーとの出会いもあり、2019年に災害対応マニュアルを修正し本格的に検討し始めます。こちらがそのマニュアルの一部になります。

写真を拡大 STEPえどがわ 大規模水害時のマニュアル 一部抜粋

7月に社員に配布し、8月にDVDを作成し、9月8日の台風15号には、災害対応マニュアルに準じた対応をしていた矢先の台風19号でした。災害対応マニュアルでは、「緊急事態宣言の場合は介助者の通常の派遣はしない」ことが決めてあります。まず介助者の安全を図ります。その上で、一緒に災害を乗り越えるためのプランを策定する途中でした。