2016/12/01
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
災害時には、自分の居所をまわりに知らせることが大切。でも「避難時にはしゃべっちゃダメ」!?
長時間にわたって重量物に圧迫されると、重量物をとりのぞいて助けようとすることでかえって死にいたってしまう現象です。クラッシュ症候群対策のため、その場で点滴などの処置をとってもらえれば救命の可能性もあがりますが、大災害の時に点滴できる人が身近にいるとは限りません。一般には、その場で水を飲ませる程度の対処法しかはなく、生存率は高くありません。

何か重たいものに挟まれた、閉じ込められたとなった場合、ほとんどの方は近所の人に助けてもらっています。クラッシュ症候群にならないほど短時間で近所の人に救けてもらうためにホイッスルを使ったり、例え手元になくても手につかんだ木材などをたたいて音を出したりするなど、意識があれば、自分の居場所を知らせる必要があることを知っておきたいですね!
さて、この事をこどもたちに伝える時には注意が必要です。
なぜかというと、園や学校の防災標語がこんなものであることが未だに多いのです。

左の写真のような『おかしもち』のケースや、『おはしも』=「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」のケースもあります。いずれも、「しゃべらない」事が重視されているのですが・・・
実際に被災後、こどもたちを倒壊家具から救出した園の先生方の話を聞くと、怖さもあって名前を呼びかけても声が出せない子がたくさんいたケースが報告されています。
こどもたちは素直なので、全面禁止になると、大人が想定する以上に一切声をだせなくなる可能性もあります。
最近のこどもたちは、家でも地域でも学校でも大きな声は禁止されています。だからこそ、救助を求める時は大声をだす練習や助けを求める練習の方が必要なのではないでしょうか?同じ考えから防犯訓練については、大声をだすための発声練習が取り入れられています。

そもそもしゃべらないというのは、あまり緊迫感がない避難訓練でジリジリジリと非常ベルがなって、「だるいー」とか「うざいー」とかだらだら無駄なおしゃべりをするケースが多いので、考えられた標語のようにもみえます。
もちろん迅速な避難のためにしゃべっている余裕がないという理由もありえますが、「こっちから煙がでています!」「先生、天井のあの部分が崩れそう!」そんな危険情報があるなら、伝えてもよいのではないでしょうか?
ついでに「はしらない」「かけない」ですが、津波の心配な地域では走ってもぶつからずケガもしない迅速に逃げる訓練をしています。また、少子化ですのでそもそも走ったところで、ぶつかる心配も少ない学校も増えています。
禁止をすると訓練がしやすくなりますが、思考停止になりやすいです。その標語は本当に根拠があるのか、全面禁止よりもするべき行動指針を示すことができないか、それを園や学校、職場ごとに具体的に考えてほしいと講演ではお伝えしています。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方