本報告書表紙の一部(出典:British Red Cross / People power in emergencies)

地域のレジリエンス

本連載ではこれまで主に、企業など組織のレジリエンスに関する調査研究の成果を紹介してきたが、今回とりあげる英国赤十字社(British Red Cross)の報告書『People power in emergencies』(2019年11月発表)は、従来とは少し異なり、地域コミュニティのレジリエンスに関する調査報告書である。

本報告書の副題には「緊急事態対応計画に対する、ボランティアおよび地域コミュニティの関与と、人間中心のアプローチに関するアセスメント」(注1)と掲げられているが、この「人間中心のアプローチ」という言葉に関しては、本報告書の最初の方に詳しく説明されている。

これは緊急事態において、人々がそれぞれ自分に合ったサポート(personalised support)を受けられるようにし、実務的(practical)および心理社会的(psychosocial)ニーズの両方に対応するサポートを提供し、人々が立ち直って生活を再建するまで長期的なサポートを提供し続ける、というアプローチである。

そして英国赤十字社としては、これを実現するためには、緊急事態対応における全ての段階(計画作成-対応-復旧)に人々やコミュニティが関与することが必要不可欠だと考えられている。

本報告書ではこのような問題意識に基づいて、英国内で各地に設置されている「Local Resilience Forum」という組織が、地域における緊急対応能力にどのように寄与しているかを調査したものである。

Local Resilience Forumとは、それぞれの地域において、公的機関や社会インフラを担う企業などの間で緊急事態対応時に協調・調整を図るための常設機関であり、民間緊急事態法(Civil Contingencies Act 2004)に基づいて、複数の市町村をまとめた38の地域ごとに設置されている(注2)。

調査は次の3つの方法によって行われている。

(1)各地の Local Resilience Forum の代表に対するアンケート調査
(2)各地の Local Resilience Forum が持っている対応計画のレビュー
(3)National Association for Vuluntary and Community Action (NAVCA)のメンバーのうち45人に対するアンケート調査

なお本報告書にはグラフなどの図がほとんどないので、本稿も文字ばかりの記事となるがご了承いただきたい。