一般避難所の近くにあったことも幸いした

福祉避難所の開設と受け入れ

・隣接する建物(社会福祉協議会事務所)が一般の避難所であったが、ベッドはなかった。そこで個別対応が必要な高齢者、障がい者を36人受け入れることになった。施設に十分な空きがあったわけではないが、夜間ということもあり通所リハビリテーションで利用していたベッドが25床空いていたので、厳しい人はそこで休んでもらった(電気は夜8時に復旧、雨も夜中にはやんだ)。
・多くの人は食料を持って避難してくれた。食料のない人には13日朝にみそ汁とおにぎりを提供。給食部門のスタッフに、施設入所者への食事を通常通りやってもらえたのが何よりだった。私たちはカップラーメンだった。
・施設にはさまざまなルートで受け入れ要請が来るが、どんな方か細かな情報がなく、別々のルートで受け入れを要請された人が同一人物であったこともあり、情報の整理に困った。
・多くの人は13日の午前中に退所された。

<高齢者は、体育館のような一般の避難所で床に毛布で横たわるのは大変だ。また、認知症や精神障がい者は大勢の人の中では不安定になってしまう。このような要配慮者にとって、ベッドがあって、個室対応もできた福祉避難所にすぐに避難できたのは何よりだったろう。
福祉避難所の環境がよければ、多くの要配慮者が早めに避難してくれるのではないだろうか。この良き事例からは、一般の避難所と福祉避難所を同時に開設して、避難者の状況に応じて使い分けるのが望ましいといえよう。>

ショートステイと福祉避難所の運営

・避難者の中には、その後、ショートステイ(在宅で生活している高齢者、障がい者が数日間、施設に入所して食事、入浴、リハビリ、レクリエーションなどを受けられる介護サービス)に切り替えた人もいた。
・ケアマネージャーから、「自宅が壊れたのでショートステイを希望する方がいる」という情報が入ってきて、13日に13人を受け入れた。最終的には18人となった。そのうち、4人は家に戻れないので入所に移行した。

<福祉避難所の確保・運営ガイドライン(内閣府防災担当平成28年4月29ページ)では、「市町村は、災害が発生し又は発生のおそれがある場合で、一般の避難所に避難してきた者で福祉避難所の対象となる者がおり、福祉避難所の開設が必要と判断する場合は、福祉避難所の施設管理者に開設を要請する」となっている。
佐久穂町の取り組みも一見すると、このガイドラインに沿って運用されたかのように思える(ただし、要配慮者の送迎、福祉避難所への受け入れはガイドラインのレベルを超える判断だ)。
しかし、これは一般避難所が福祉避難所に隣接しているがゆえに、避難者に大きなストレスを与えずに移ることが可能だったからだ。たとえば、一般避難所と福祉避難所が離れていれば大雨の状況で要配慮者が福祉避難所に避難できるだろうか。
少なくとも介護保険や障害者総合支援法で在宅サービスをうけている要配慮者と家族は、最初から福祉避難所に向い、避難できるように体制を整えるのが望ましい。
一方で福祉避難所となった施設は、通常の福祉サービスに加え、オーバーベッドによる受け入れ、福祉避難所の運営と負担が著しく重くなる。避難していない福祉関係者らによる早期支援が重要だ。>

(了)