2020/01/19
インタビュー

風水害は、地震災害と違って事前に何が起こるかが把握でき、災害発生までに事前準備ができるリードタイムがあると考えられてきた。しかし、昨年、日本を襲った台風15号や19号は、予測を超えた大きな被害を各地にもたらした。これからの防災をどう見直せばいいのか。関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長で人と防災未来センター長の河田惠昭氏に聞いた。
歴史を学び、災害文化を築け
科学技術の発展により、災害を正しく予測できるようになってきたと考えがちだが、それは間違えで、実は、災害の特徴すら正確に把握することができていないことにわれわれは気付かなくてはいけない。
例えば2018年に関西地方を襲った台風21号、2019年に関東、東北を襲った台風15号や19号についても、実はことごとくその予測に失敗をしている。
台風19号については、名古屋大学宇宙地球環境研究所の坪木和久教授の研究によると、台風の北東側に「大気の河」と呼ばれる水蒸気の多い領域が広がっていて、熱帯から多量の水蒸気を運び込んで、これが東北に多くの雨を降らせたという。そのことが事前に把握することができなかった。気象庁では、台風の中心気圧などの強度を衛星で観測される台風の雲パターンから推測しているが、この方法では、中程度の台風強度は比較的精度よく推定できても、強い台風になると誤差が大きく限界があり、精度を良くするには航空機による直接観測が不可欠であるという。台風に限らず高潮についても、降雨量についても、どこまで正確な数値になっているかは疑わしいものがある。つまり、近年風水害については、地震と違って事前に何が起こるかが把握でき、災害発生までにリードタイムがあると考えられてきたわけだが、実際には地震も風水害も、発生で何が起こるか分からないと考えるべきだ。
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/24
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方